[脳腫瘍の疫学] basics

Epidemiology of brain tumors

掲載誌: Verma M (ed.): Cancer Epidemiology. Methods in Molecular Biology, 472巻; Humana Totowa, Totowa, 2008; 323-342; ISBN 978-1-60327-491-3

グリオーマ(神経膠種)は脳腫瘍全体の70%を占めており、その中で最も多いは組織学的に悪性なグリオブラストーマ(神経膠芽種)である(WHOグレードIV)。グリオーマは高度に発展した工業国で高い発生率を示す傾向がある。アフリカやアジアの人種より白色人種での発生率が高いことを示す報告もある。毛嚢細胞性星状膠細胞腫(WHOグレードI)を除き、予後は悪い。神経膠芽腫の診断後の5年生存率は3%以下であり、年齢が上がるにしたがって予後が悪くなることは一貫して明らかである。グリオーマは遺伝的がん症候群の一つであるが、この症候群の罹患率は非常に低い。いくつかの職業、環境発がん物質、食事を含む多くの環境的因子および生活スタイル因子がグリオーマリスクの上昇に関連すると報告されているが、明確な関連を示す因子は治療用X線照射のみである。特に、急性リンパ芽球性白血病に対するX線照射治療を受けた小児は、多くは治療後10年以内で、グリオーマおよび初期の神経外胚葉性腫瘍リスク上昇を示す。TP53遺伝子におけるG:C → A:T転位 とグリオーマのMGMT (O6-methylguanine-DNA methyltransferase)遺伝子プロモータ領域のメチル化との著しい相関はいくつかの研究で報告されている。これには、グリオーマの発生過程で内因性または外因性アルキル化因子により生成される可能性のあるO6-methylguanine DNA付加体が関与する可能性が示唆されている。

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