研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[超低周波磁界への労働関連のばく露と認知症:スウェーデンの双子における人口ベースの認知症研究からの結果] epidem.

Work-related exposure to extremely low-frequency magnetic fields and dementia: results from the population-based study of dementia in Swedish twins

掲載誌: J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2010; 65 (11): 1220-1227

【背景】スウェーデン認知症双生児研究(HARMONY)から得た9503人を用いて、超低周波(ELF)磁界認知症およびアルツハイマー病リスクの関連を調査した。この調査は、確実な職業データおよび診断データを用いた。【方法】認知症診断は、電話スクリーニングと本人の精密検査受診を根拠にした。生涯における主な職業は、EMFばく露マトリックスによりコード化された。共変数は、年齢、性別、教育、血管リスクファクター、仕事の複雑さである。これまでの研究と同様に、データを75歳までの発病とそれ以降の発病、男性と女性、肉体労働者と非肉体労働者に分けた別々の分析も併せて行った。全標本の分析には一般化推定方程式(双子ペアの包含を調整するため)、双子ペアのみの分析には条件付きロジスティック回帰分析を用いた。【結果】EMFレベルは認知症またはアルツハイマー病と有意に関連しなかった。しかし層化分析を行うと、次のグループで、中および高レベルのEMFは、低レベルに比較した認知症リスクの上昇と関連した。75歳までの発病グループで、中レベルのオッズ比1.94(95% 信頼区間: 1.07-3.65)、高レベルのオッズ比2.01(95% 信頼区間: 1.10-3.65)であり、肉体労働者グループで、中レベルのオッズ比1.81(95% 信頼区間: 1.06-3.09)、高レベルのオッズ比1.75(95% 信頼区間: 1.00-3.05)であった。片方が認知症である42組の双子ペアに関する結果は統計的有意に達しなかった。【結論】 職業的EMFばく露は、主として早期発病の認知症および肉体労働者における認知症と関係があるように見える。

研究の目的(著者による)

超低周波磁界への労働関連のばく露と、認知症及びアルツハイマー病リスクとの関連を、スウェーデンの双子における認知症研究(HARMONY)の参加者において調査した。

詳細情報

超低周波電磁界への高いばく露のある職業には、例えば鉄道労働者(4.03µT)、溶接工(1.12µT)、森林労働者(0.76µT)、レジ係(0.45µT)、小売業者(0.34µT)、郵便局員(0.31µT)、調理師(0.31µT)、電気工(0.31µT)、歯科衛生士(0.30µT)、化学技術者(0.28µT)、鉄道操車係(0.25µT)、歯科医師(0.24µT)が含まれた。
発症年齢(≤ 75 vs. > 75歳)、性別、労働状態(手作業か否か)で階層化したサンプルを用いてデータ分析を実施した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 労働関連の磁界へのばく露のレベル: < 0.12 µT
集団 2 労働関連の磁界へのばく露のレベル: ≥ 0.12 - < 0.20 µT
集団 3 労働関連の磁界へのばく露のレベル: ≥ 0.20 µT

調査対象集団

調査規模

タイプ
合計 20,206
参加者 13,693
統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

全体として、超低周波磁界への労働関連のばく露認知症またはアルツハイマー病リスクと有意に関連していなかった。但し、層別解析では、75歳までに発症した症例及び手作業労働の参加者において、中及び高レベルのばく露認知症リスクと関連していた。
著者らは、超低周波磁界への労働関連のばく露は、早期に発症する、また以前の手作業労働者において、認知症リスクを高めるかも知れない、と結論付けている。

研究助成

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