[論説:携帯電話の無線周波電磁界ばく露と脳のグルコース代謝] comment

Cell phone radiofrequency radiation exposure and brain glucose metabolism

掲載誌: JAMA 2011; 305 (8): 828-829

本誌のVolkowらの研究は、携帯電話使用後の脳におけるヒトのグルコース代謝の最初の研究である。この研究は2つの重要な知見を報告した。第一は、帯電話が放射するRF電磁界の50分間ばく露により、脳の特定の皮質領域のグルコース代謝速度が上昇したこと。第二は、脳のある領域での神経代謝速度上昇とRF電磁界エネルギー吸収比の推定値との間に顕著な線形相関が観察されたことである。このような脳のグルコース代謝への影響が健康にどのような結果をもたらすかは不明であるが、この研究結果は、「携帯電話使用が脳機能に作用するかも知れない、そして特定の影響は、その作用を受けた脳の領域によって決まるかも知れない」という結論を示している。重要な問題点は、観察された影響が温度上昇によって修飾されているか否かである。携帯電話と接触している頭部皮膚温は、10分間以内の携帯電話使用後に2℃以上の上昇をする。この温度上昇は主として、動作中の携帯電話が発生する熱に起因しており、放射されたRF電磁界エネルギーによるものはそれより少ない。この熱エネルギーの脳内への拡散が大きいとは思われない。Volkowらの研究でグルコース代謝増加を示した脳の領域は接触部位からかなり離れている。したがって、観察された影響が加熱によって引き起こされたとは考えにくい。Volkowらの結果は、携帯電話および卓上コードレス電話を含む無線電話からのRF電磁界放射による急性および長期の健康影響の可能性に関する懸念の新たなひとつになる。携帯電話への急性ばく露によるグルコース代謝増加がもしあるとしてもその生物学的意味は不明であるが、この結果を見れば、さらなる研究を行うことは妥当である。重要な問題点は、今回用いられたものより高いRF電磁界エネルギーをもつ無線電話の通常使用により脳のグルコース代謝慢性的に増加するか否かである。急性および慢性健康影響の可能性は明確にする必要がある。

ばく露

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