概論

電磁スペクトル中の周波数範囲が異なる電磁界は、ヒトおよび生物での知覚性および影響においてかなり大きな違いがあります。ヒトは電界作用を、例えば、プルオーバ
ーを脱ぐ時、またはドアノブに触れた時の小さなスパークおよびそれと分かる放電によって間接的に知覚できます。永久磁石または電磁石があれば、磁界は知覚し得るものになります。電磁界の領域では、
例えば、マイクロ波熱作用を私達は知っています。マイクロ波は、電子レンジの中で肉や液体を加熱します。

生体組織への電磁界侵入現象およびその影響は、本質的には電磁界の周波数と強度、それから組織反射および吸収特性、共振現象および、該当する場合には接地システムによって決まります。

ヒトおよび生物への電磁界の影響を説明するメカニズムは、電磁界の周波数範囲によって異なります。さらに、直接的影響(例えば、神経刺激や生体組織加熱)と間接的影響(例えば、電子的植え込み装置
との電磁干渉または帯電体との接触時のスパーク放電)は区別しなければなりません。EMFポータルの分類では、主たる直接的および間接的影響が異なる4つの周波数帯に区別されています。

静的な界 (0 Hz)

静電界は、生体構造に力の作用を及ぼします。ここで注目すべきは、帯電作用をもたらす電荷移動です。これが、体毛の感知しうる動き、微小なスパーク放電および大規模な雷放電などの作用を引き起こ
します。

静磁界は、血液中のイオンなど体内を移動する電荷と相互作用します。さらに磁気力は、電子的植え込み装置や受動的な金属インプラントに影響を及ぼします。このような影響には、0.5 mTまたはそれ以上
静磁界が関連しますが、この程度の磁界は私達の日常生活で実際に見られるものです(例えば、強い永久磁石の近くなど)。磁気共鳴画像装置での医学的検査中には、およそ10 Tという非常に強い磁界
発生します(ICNIRP, p. 505; BAG; LUBW, p. 57)。

低周波電磁界 (0.1 Hz–1 kHz)

超低周波電磁界で支配的な起こり得る影響は、感覚器、神経および筋の細胞のような興奮性細胞に対する交流磁界刺激作用です。生きている組織において、細胞刺激する誘導電界および電流によってこ
の作用は引き起こされます。電子的植え込み装置への起こり得る影響もまた、誘導電界および電流に基づいています。

中間周波電磁界(1 kHz–10 MHz)

中間周波電磁界の影響は、超低周波および無線周波電磁界の影響の組み合わせで成り立ちます。すなわち、低域の周波数範囲での誘導電界および電流による刺激作用は、高域の周波数範囲ではだんだんに
熱作用へと入れ変わります。

無線周波電磁界 (10 MHz–300 GHz)

無線周波の領域では、電磁界電界成分と磁界成分を持ちます。分子およびその他の荷電粒子の運動活発化(摩擦熱)により引き起こされる熱作用は、ヒトおよび生物への起こり得る影響として支配的な役
割をもちます。