研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[携帯電話使用と脳腫瘍] epidem.

Cellular-telephone use and brain tumors

掲載誌: N Engl J Med 2001; 344 (2): 79-86

この研究は、携帯電話使用と頭蓋神経系腫瘍の関連を調べる目的で、1994年から1998年において、米国アリゾナ州フェニックス、ボストン、ピッツバーグの病院で実施された症例対照研究である。組織学的に確認された症例は、神経膠腫489人、髄膜腫197人、聴神経鞘腫96人の合計782人であった。対照799人は、これらの症例と同じ病院の入院患者であった。携帯電話の使用経験なし、またはごくまれに使用した人を参照群とした。その結果、携帯電話の累積使用時間100時間以上の使用者群の相対リスクは、神経膠腫で0.9(95%信頼区間、0.5〜1.6)、髄膜腫で0.7(同、0.3〜1.7)、聴神経腫で1.4(同、0.6〜3.5)、すべての種類の腫瘍を合わせた場合で1.0(同、0.6〜1.5)であった;携帯電話使用時間が1日60分間以上の使用者群、または規則的使用年数が5年以上の使用者群におけるリスク上昇の証拠はなかった;腫瘍が電話使用頭側に偏って多く発生することはなかった、と報告している。

研究の目的(著者による)

携帯電話使用が脳腫瘍を生じるかどうかを調べるため、米国において症例対照研究を実施した。

詳細情報

研究方法についてのより詳細な情報は、publication 8978 で得られる。
携帯電話の定常的使用は、週に二回以上の通話と定義した。携帯電話を生涯に五回未満しか使用したことがない、または定常的に(少なくとも週に2回)使用したことがない人々は、「使用したことがない、または稀に使用」のカテゴリーに分類した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (相対リスク(RR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 ハンドヘルド型携帯電話使用:なし
集団 2 ハンドヘルド型携帯電話使用:生涯で1-5回
集団 3 ハンドヘルド型携帯電話使用:生涯で> 5回
集団 4 ハンドヘルド型携帯電話使用:定常的使用
参照集団 5 平均的な一日の使用:全く、またはほとんど使用せず
集団 6 平均的な一日の使用:< 3分
集団 7 平均的な一日の使用:3から< 15分
集団 8 平均的な一日の使用:≥ 15分
集団 9 平均的な一日の使用:≥ 60分
参照集団 10 定常的使用の期間:全く、またはほとんど使用せず
集団 11 定常的使用の期間:< 0.5年
集団 12 定常的使用の期間:0.5から< 3.0年
集団 13 定常的使用の期間:≥ 3.0年
集団 14 定常的使用の期間:≥ 5.0年
参照集団 15 累積使用:全く、またはほとんど使用せず
集団 16 累積使用:< 13時間
集団 17 累積使用:13から100時間
集団 18 累積使用:> 100時間
集団 19 累積使用:> 500時間
参照集団 20 使用開始年:全く、またはほとんど使用せず
集団 21 使用開始年:1995-1998年
集団 22 使用開始年:1993または1994年
集団 23 使用開始年:≤ 1992年
集団 24 使用開始年:< 1990年

調査対象集団

症例集団

対照集団

調査規模

症例 対照
参加者 782 799
その他:

神経膠腫の症例489人、髄膜腫の197人、聴神経鞘腫の96人

統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

携帯電話使用は神経膠腫髄膜腫、または聴神経膠腫と有意に関連していなかった。携帯電話の累積使用または使用の側性との関連は認められなかった。

研究の限界(著者による)

観察期間が短過ぎて、長期的なヘビーユーザーのリスク、および潜在的に長期の腫瘍潜伏期間を評価できなかった。

研究助成

この論文に対するコメント

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