研究のタイプ: レビュー (医学/生物学の研究)

[催奇形性、生殖、発達に対する熱的閾値] review

Thermal thresholds for teratogenicity, reproduction, and development

掲載誌: Int J Hyperthermia 2011; 27 (4): 374-387

ヒトの胚および胎児は、発生の決められた段階において化学的、物理的攻撃に特に弱いかも知れない。特に、細胞の増殖、遊走、分化アポトーシスなどスケジュール化された過程は温度上昇の影響を受けやすい。自身の体温調節に限定的能力しか持たない発達中の胚および胎児は、母親の熱調節に全面的に依存している。動物モデルにおいては一般的に、母親の深部体温が正常レベルから~2℃の上昇では長時間、2-2.5℃の上昇では0.5-1時間、≧4℃の上昇では15分間で発生異常が生じる。熱調節および熱的中性周囲温度に有意な差異があるため、動物データをヒトに直接外挿することは無謀であり、上記の温度はヒトの発生上の有害な影響の閾値の合理的な予測値になるか、ならないか不明である。この4℃の温度上昇に必要なSARを検討すると、1℃の上昇に~4 W/kgが必要なことから、健康成人女性において全身平均(WBA)のSAR ≧15 W/kgが必要になる。しかし、母親における無症状性の小さな熱ストレスが理論上は熱拡散メカニズムとして、末梢への血液のシャントを増加させる。これが、想像するところでは、胎盤およびへその緒の血液灌流を変化させ、胎児の熱交換を低下させる。熱調節反応には多くの要因が関係するため、そのような影響の大きさと閾値を予測することは困難である。しかし、非常に安全側に見積もったWBAで1.5 W/kgという値(測定可能な温度上昇を防御する閾値の1/10)は、妊娠女性の体内の胚および胎児への血流有意な低下を防止するに十分であるように思われる。この値は現状のガイドライン値より3倍以上大きい。胚および胎児へのRF局所ばく露に関しては、母親による大きな吸収と伝導・対流の熱交換による熱拡散が重要な防護になるであろう。一方、理論上は、28日の胚全体または胎児の体積1gで平均して1W/kgのばく露は、体温を0.2℃以上 は上昇させないであろう。安全基準があるため、胎児にこのような大きさのばく露が生じることは通常のRF発生源では起きない。胎児への超音波ばく露制限はFDAにより、時間平均の空間ピーク値の最大値で720mW/cm2と定められている。ルーチン検査の超音波スキャンは典型的にはもっと低いレベルで行われ、温度上昇は無視できるレベルである。しかし、もっと高出力の超音波ドップラー装置は、ある条件下で胎児体温を数℃上昇させることが可能であり、胎児の検査への使用は最小に止めなければならない。

影響評価項目

ばく露