マイクロ波ヒアリング

(2016年4月時点の英文ウェブページの和訳です)

マイクロ波ヒアリングは、無線周波電磁界の立証された急性影響に入るものですが、特殊なものです。強力な30マイクロ秒またはそれ以下の短パルスおよび長いパルス間隔の200 MHzから6.5 GHzまでの範囲
電磁界(典型的にはレーダ信号に利用される)で起きます。知覚はブーンブーン、カチリ、パチパチという音として記述されます。パルスエネルギーが脳に吸収されることで熱弾性波が発生し、その熱弾
性波が可聴周波の範囲で内耳を機械的に刺激することが原因で生じる作用です。

知覚閾値は、パルス当たりのエネルギー束密度に依存し、信号全体を時間平均した電力束密度には依存しません。比吸収(SA)で4-16 mJ/kgに相当する30マイクロ秒以下のパルス幅の2.45 GHzの場合、知覚
閾値は、ばく露のエネルギー密度で100-400 mJ/m² 程度になります。レーダのような短パルス信号へのばく露の評価には、SARの代わりにSAを用います。しかし、上述のSA値で30マイクロ秒間のパルス持続>中に、脳には130-520 W/kgのSARピーク値が生じることが示されています(cf. ICNIRP, p.506およびp.513)。ICNIRPの
推奨の中には、300 MHzから10 GHzまでの周波数範囲のパルスばく露に関する特別なばく露限度値が設定されており、その比吸収での限度値は公衆ばく露で2 mJ/kg、職業ばく露で10 mJ/kgです(cf. 基本制限の章)。参考レベルにおいて、これに相当する限度値パルス幅内での電力密度に関して設定されています。これに拠れば、ICNIRPのばく露限度値が遵
守された場合、マイクロ波ヒアリングは強力なレーダ装置のすぐ近く(すなわち、職場)に限って起こり得るものです。スイス連邦環境省(BAFU, p. 37)は、ICNIRPより低い知覚閾値を明示し、ICNIRPのばく露限度値が遵守されたとしてもマイクロ波ヒアリングは予測され得ると述べています。

しかしながら、放送、TVおよび移動体通信信号がマイクロ波ヒアリングを起こすことはあり得ません。その理由は、これらの信号のパルスパターンはレーダ信号とは比べるべくもなく、パルス当たりのエネ
ルギー束密度があまりにも低いからです(アナログラジオ信号の場合には、パルスが存在さえしないことも理由になります)。したがって、移動体通信電磁界など日常のばく露の場合、マイクロ波ヒアリン
グに相当するような知覚作用を裏付ける証拠は何もありません(cf. FOPH, p. 11)。