[レター:携帯電話の作動と脳のグルコース代謝] comment

Cell phone activation and brain glucose metabolism

掲載誌: JAMA 2011; 305 (20): 2066

編集長へ:Volkow博士らの研究で、携帯電話放射による脳代謝活動上昇の証拠が見出された。研究のいくつかの点から見て、その結果には疑問がある。(1) 分析に用いた電磁界放射の物理は余りにも単純化されすぎている。著者らは脳内に蓄積される無線周波変調電磁界の強度を真空中のダイポール近傍電磁界と等しいと仮定した。携帯電話アンテナはダイポールではなく、多くの場合フラクタルであり、その著しい角度依存性が無視されている。また脳は複雑な誘電特性を持つため、仮定した電磁界とはかけ離れてしまい、彼らが主張する相関を無価値にするであろう。生体組織内の電磁界については広く研究されており、もっと実体的なモデルを使うこともできる。また、この研究は作動中の携帯電話による単純な熱作用の影響の可能性をコントロールしていない。(2) 被験者ばく露状況に対してブラインドであったが、分析者はそうではなかった。用いられた統計学は、どの脳画像が携帯電話作動中のものであるかを分かっていることに明らかに頼っており、これはバイアスをさらに生み易くする。またこの研究では、作動中の携帯電話を当てる頭側を無作為化していない。(3) 統計的結果に内部一貫性がないように見える。図3は、携帯電話のオン時とオフ時での脳活動におけるほぼ一定の差を示している。プロット図に誤差範囲表示がないが、このような規則的な差のパターンを立証するためには、誤差はその差に比べて小さくなければならない。これは非常に有意な影響ということになるが、著者らの主張はこれに反し、95%信頼限界をいくらか上回った影響である。またこのプロット図の他の図版は、誤差範囲付きできりきりの線形関係を示しているが、これは大幅な過剰推定か高い相関のどちらかでなければならない。(4) 図2の脳画像の人目を引く特徴は、携帯電話オン時の画像で全体的脳活動が高いことであるが、それに反し、著者らは全脳グルコース代謝ばく露条件による違いはなかったと述べている。一方、オン時とオフ時で(左右は反転しているが)左右差は同等に見えることから、この差はノイズによるものかも知れないことを示唆している。(注)質問対象の論文はVolkow 2011(JAMA 305 808-813)、著者回答はVolkow 2011(JAMA 305 2067-2068)である。いずれも本データベースに登録されている。

ばく露

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