[Falzone他 (Int J Androl 34: 20-26, 2010) による『ヒト精子の先体反応、頭部形態計測、透明帯への結合に対するGSM携帯電話のパルス900 MHzの放射の影響』に関するレター:著者の回答] comment

RE:'The effect of pulsed 900-MHz GSM mobile phone radiation on the acrosome reaction, head morphometry and zona binding of human spermatozoa' by Falzone et al. (Int. J. Androl 34: 20-26, 2011): Authors' Reply

掲載誌: Int J Androl 2012; 35 (1): 104

編集長へ:(Lerchl氏が示したような)精子頭部の体積は球体として計算できるという指摘は間違っており、正当な根拠のあることではない。最初に精子の1次元の測定値から表面積や体積の推定を試みたVan Duijn(1957)の論文が今回の論争に適用できる。この論文では、頭部投影面積Aはデカルトの正葉線で近似され、A = 0.73×L×Bmax(L = 頭部の長さ、Bmax =頭部の最大幅)で計算されている。頭部の体積を求める経験式は、中片部を円柱、主部をリボン形、終末部を円柱でモデル化して導き出されており、その式から頭部の体積は15.4μm3と推定された。それ以降、精子の頭部の体積の推定値に関していくつかの論文が公表されているが、その一例としてCurryら(1996)を参照すれば、頭部の長軸は6.66 ± 0.58μm、短軸は4.2 ± 0.52μm、面積は20.50 ± 2.25 μm2 、体積は22.2 ± 1.2 μm3である。 体積推定値は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたレジン超薄膜切片の立体的評価から得られた。我々のデータでは、正常なヒト精子対照群)の長軸は5.93 ± 0.60μm、短軸は4.45 ± 0.23μm、面積は18.83 ± 1.37μm2である(Falzoneら2010)。染色法が頭部の形状に与える影響を考慮しても、我々の論文の体積評価のコントロールデータはCurryら(1996)の記述したものと同様であった。さらに言えば、文献上での正常なヒト精子の体積の値は15.4から25.6μm3の範囲である。Lerchl氏が引用した62.2μm3という我々の値は、したがって正常なヒト精子の体積の過大推定であった。試料には様々な大きさと形状の精子が不均一に含まれている。大部分の場合、正常細胞のパーセンテージが14%以上になるのは稀で、このことは大半(>80%)が形状ばかりでなく大きさも異常であることを意味する。表1(Falzoneら2010)のデータは精子計算機分析(CASA)システムで計測されたが、これは全自動化されており操作者バイアスの影響はないことを特筆したい。頭部形態についての2次元CASA推定値から体積(2次元)を推定するのは不可能である。これを行うためには、頭部の実際の「厚み」を考慮しなければならず、TEMのような技法が必要であろう。したがって、「ヒト精子の核」の体積の評価(5μm3)は精子頭部の表面積や体積を考慮しておらず、論文の文脈を無視して持ち出されている。Falzoneら(2010)のデータは、我々の見解では、確固とした、科学的に健全なものである。

ばく露

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