研究のタイプ: レビュー/サーベイ論文

[遺伝子転写に及ぼす電磁界ばく露の影響] review

Effects of electromagnetic field exposure on gene transcription

掲載誌: J Cell Biochem 1993; 51 (4): 381-386

電磁界とガンとの関連を指摘する疫学論文は多く発表されているが、ELF電磁界が生体とどのように結びつくかについての機序は未だに不明である。最近は電磁界曝露の影響を観察するという単純な研究は減る傾向にあり、変わってその基礎にある機序を研究しようとする傾向が見られる。そのうちの一つが遺伝子転写に関する研究であるその利用は第一にEMFによる細胞機能の変化は遺伝子転写の変化なしにはおき得ないという認識がある。第二に遺伝子転写に関する知識が短期、長期曝露の結果を評価する手段となるであろう。第三に転写から出発してその前段階を一段づつ逆上がって行けば全体の機序を説明できるのかもしれないという希望がある。 電磁界曝露により、遺伝子転写に影響があると最初に報告したのは1983年Goodmanらであるが、彼女等の研究には多くの問題点がある。例えば、曝露群とコントロール群、擬似曝露群との取扱いが論文で特に一致していない。RNAの抽出法が他の実験室の追試では確認されていない等に。しかし、多くの他の文献、Phillipsらの実験からc-fos転写が焦点となってきたように考えられる。c-fosをキーとしてその上流の情報伝達の段階を追って行けば、EMFが細胞に働く機序を解くことが可能となるかもしれない。