[静磁界による眩暈について] med./bio.

On the vertigo due to static magnetic fields

掲載誌: PLoS One 2013; 8 (10): e78748

この研究は、「一様な静磁界中で静止している時に前庭性眼振が起きる」と報告された現象のメカニズムを探索するために、MRIボア内の7Tの静磁界中に、仰臥位、目隠し(眼球運動測定時は、目隠しではなく照明を消した)で置かれた健康成人(n=25)における眩暈および2D眼球運動を定性的および定量的に記録した。数週間の間隔で3つの実験を行った。第1実験は閾値探索、定性的記録、実験の問題点の洗い出しを目的とし、第2、第3の実験では、第1実験の知見を基に、詳細な条件設定下で定量的記録を取った。安定した低速のキャスターで被験者を乗せたベッドをボアへ進入および退出させ(進入、退出時とも、dB/dtのピーク値は約0.6T/秒、dB/dtにばく露した時間は約20秒間)、7T中に最大135秒間静止させた。その結果、ボア進入につれて、頭部のばく露磁界強度が増す時に、まず眩暈感覚が起こり、さらに磁界強度が増すと回転の感覚が起きたが、各被験者において2つの感覚の発生閾値は有意に相関した;7T内で静止中の眼振は水平面のものが多く、ばく露持続したが、一部では次第に減弱した;ボアから退出して実験開始の位置に戻った後に、反対方向の回転の感覚が体験された;顔を上に向けた場合、主な眩暈の感覚は水平面での回転(発生率85%)であり、これは被験者間で一貫していた;頭部を左または右に90度回転させた場合、感覚が垂直面での回転に移行せず、感覚の状況依存性が示唆された;長いばく露の場合、7Tで静止の42秒を含めて平均50秒間、回転感覚が継続した;ボア退出後に体験された反対方向の回転の感覚は平均30秒間持続した、と報告している。著者は、ボアの出入り時のトランジェントな磁界による前庭刺激がメカニズムに関与する可能性を完全には排除できないものの、その可能性は低いと主張している。

ばく露