疫学研究で示唆されているには,磁界と発ガンとの関連である.理論的には,磁界は体内に自由に入って体内電流を誘導するのに対し,電界は著しく減少する.1980年代後半までの動物実験は殆ど磁界を除外した電界に関しての研究であるため,疫学研究データにあてはめるには疑問がある.EMFが発ガンに関連があるか否かを考える時にプロモータ促進因子という考え方がある.Initiator/promotorという概念は実験皮膚ガンにあてはめた考え方で全てのガンには当てはまらないかもしれない.しかし,本稿ではEMFがPromotorとしての可能性があるだろうかとの観点から以下の4領域に焦点を絞った.1)細胞間情報伝達:促進因子は通常細胞間情報伝達を破壊するEMFがギャップジャンクションを介する情報伝達機構に影響するか否かの研究がスタートしたばかりである.2)細胞膜を介するイオン流出入に対する影響:カルシウムイオン流出が問題とされているが細胞内情報伝達におけるカルシウムイオンの役割を考えると,ガンとの関連を論ずるには極めて困難である.3)遺伝子:特殊な遺伝子を活性化するかとの視点から研究が行われているが,現在までのところでは,特殊なガン遺伝子を発現させるというよりはタンパク合成を増加させる効果が見られるというべきである.4)ストレーサーとしてのELF EMF:ストレスによりガンが増悪することが云われている.ELF EMFがストレスとして作用するか否かは実験成績は一致していない.一つだけメラトニンがELF EMFが抑制されるという報告がある.メラトニンは免疫機能をたかめるため,ガン細胞の増殖を説明することができる可能性がある.以上をまとめてEMFの曝露条件と生物学的条件を考えて動物実験を計画することが望ましい.
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