研究のタイプ: レビュー/サーベイ論文

[“電磁過敏症”―新たな環境病] review

"Sensitivity to electricity"--a new environmental epidemic.

掲載誌: Allergy 1996; 51 (8): 519-524

スウェーデンでは、ここ10年来電磁波過敏症が流行している。主訴は、コンピューターのビデオディスプレー(VDU)作業に伴う顔面の発赤や炎症である。一時的あるいは散発的な報告は他国でもあるが、流行は見られていない。VDU曝露の疫学調査では、主観的な訴えは自称電磁波過敏症患者に多く見られたが、客観的な可視症状では健常者と差がなく、皮膚バイオプシーでも本症に特異的な病変はなかった。二重盲検誘発試験でも患者は電源の入切を感知できず、電源を切った時に重篤な症状が現れることもあった。その他の証拠からも、いわゆる“電磁波過敏症”は、心身症と判断するのが妥当である。心身症の症状としては、感覚、運動、自律神経系症状及び心因性痛覚の4つだが、いずれも器質的疾患によっても生じるため、臨床的な鑑別が不可欠である。ある環境因子を病因とみなす流行は歴史的に数多く見られる。これらは環境身体化症候群と呼ばれ、近年の例では慢性疲労症候群などが上げられよう。心身症や環境身体化症候群の患者は、一般に病因の心理学的解釈を極端に嫌う。また、病因をころころと変える「病因可塑性」といわれる傾向がしばしば見られる。マスメディアは流行を煽りがちであるが、取り返しがつかないほどの騒ぎになるのを防ぐため、科学者はすみやかに正確な情報を提供すべきである。対処法としては、科学的知見を正確に伝えることが肝要であり、また、職場環境の改善をすみやかに実施すべきである。幸い本症に長期的影響は知られておらず、VDUから離れれば症状は軽快する。ただし、症状は患者にとっては物理的痛みと同様、実際に感じられているものなので、決して無視してはならない。

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