5-フルオロウラシルへの耐性とそれによって生じる免疫抑制は、乳がんの臨床的治療における5-FUの広範な適用の妨げとなっている。この研究は、乳がんの治療における50 Hz電磁界と5-FUとの複合作用を調べた。乳がん細胞株MCF-7及びヒト乳房上皮細胞株MCF10Aを、50 Hz電磁界に0、2、4、8、12時間事前ばく露した後に、異なる濃度の5-FUで24時間処理し、MTTアッセイ及びフローサイトメトリで細胞の生存力を分析した。50 Hz電磁界への12時間の事前ばく露後、MCF-7及びMCF10A細胞におけるアポトーシス及び細胞周期分布をフローサイトメトリで検出し、DNA合成をEdU取り込みアッセイで測定した。アポトーシス関連及び細胞周期関連の遺伝子及びタンパク質の発現レベルを、qPCR及びウェスタンブロッティングでモニタした。その結果、50 Hz電磁界への12時間の事前ばく露は、ばく露量に応じた形でMCF-7における5-FUの抗増殖効果を強めたが、正常なMCF10Aでは強めなかった。50 Hz電磁界ばく露はMCF-7及びMCF10Aのアポトーシス及びP53発現には影響しなかったが、DNA合成を促進し、MCF-7細胞の細胞周期のS期への移行を生じ、細胞周期関連タンパク質のサイクロンD1及びサイクリンEの発現レベルを上方制御した。DNA合成を特異的に攪乱する5-FUの薬理学的機序を考えると、この抗増殖効果の増強は、活発なS期のMCF-7細胞に固有の5-FUに対する感受性から生じているかもしれない。この知見は、50 Hz電磁界ばく露を介した細胞周期のS期への移行促進を通じた、MCF-7細胞に対する5-FUの細胞毒性活性の増強を証明し、50 Hz電磁界と化学療法の組合せに基づくがん治療の新たな方法を提示するものである、と著者らは結論付けている。
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