研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[CHO細胞株に対する900 MHz GSM無線周波電磁界へのばく露の直接的及び間接的な影響:非電離放射線によるバイスタンダー効果のエビデンス] med./bio.

Direct and indirect effects of exposure to 900 MHz GSM radiofrequency electromagnetic fields on CHO cell line: Evidence of bystander effect by non-ionizing radiation

掲載誌: Environ Res 2019; 174: 176-187

この研究は、無線周波RF電磁界によるバイスタンダー効果の可能性を調べた[バイスタンダー効果:電離放射線を直接照射された細胞だけでなく、その周囲の細胞(bystander cell)にもDNA損傷染色体異常等の影響が見られることをいう。直接照射された細胞とバイスタンダー細胞との間のシグナル伝達が何らかの役割を担っていることが示唆されている]。チャイニーズハムスターの卵巣細胞を、平均比吸収率SAR)が2 W/kgの900MHzのGSM RF放射に4、12または24時間ばく露した。分布が一様な電磁界を発生させ、無関係のRFばく露を避けるため、キャビティ[空隙]をデザインし、これを用いた。細胞膜の透過性、細胞の酸化還元活性、代謝及び有糸分裂細胞死、ならびにDNA損傷を分析した。最も効果的なばく露時間と統計的に有意に変化したパラメータを選択し、バイスタンダー効果の誘導を評価した。更に、細胞内及び細胞外の活性酸素種ROS)レベルを測定し、非電離放射線によるバイスタンダー効果の分子機序を評価した。その結果、4、12または24時間直接的にRFばく露した細胞には、細胞膜の透過性、細胞の酸化還元活性、代謝細胞活性及び小核MN)形成頻度には、統計的に有意な変化は認められなかった。但し、24時間のRFばく露は、直接的にばく露された細胞、及びばく露された細胞からの媒体(条件培地:CCM)を受け取ったバイスタンダー細胞の両方において、クローン原性の統計的に有意な低下、ならびにオリーブモーメントの統計的に有意な上昇を生じた。RFばく露は、細胞内および細胞外のROSレベルの統計的に有意な上昇も生じた。この結果は、CCMで処理した細胞におけるバイスタンダー効果の誘導を明確に示すものであり、非電離放射線(900 MHz GSM RF)がバイスタンダー効果を生じ得るという最初の報告である、と著者らは結論付けている。また、この結果は、電離放射線の場合と同様に、ROSがRFの間接的な影響を生じる潜在的な分子である可能性がある、との仮説を提唱している。

ばく露