豊かな環境は未熟な脳の認知に対して正の効果を有することが示されているが、出生前に携帯電話にばく露した高齢の子孫へのインパクトは不明である。この研究は、出生前に携帯電話にばく露した高齢の仔ラットの認知に長期的な影響を生じるかどうか、また、成熟期の豊かな環境がシナプス可塑性を変化させることで認知障害を救済し得るかどうかを調べた。妊娠ラットを出産前に短期間または長期間、携帯電話にばく露し、仔ラットを無作為に対照群または豊かな環境群に割付けた。高齢の仔ラットの空間学習及び記憶をモリス水迷路で、海馬細胞の形態をヘマトキシリン‐エオシン染色で、シナプスの超微細構造を透過電子顕微鏡法で、それぞれ調べた。シナプトフィジン(SYN)、シナプス後肥厚部-95(PSD-95)および脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現をウェスタンブロットで検出した。その結果、出生前の携帯電話への長期ばく露は、高齢マウスの認知障害、海馬細胞の形態学的変化、シナプス数の減少、SYN、PSD-95およびBDNFの発現の低下につながったが、短期ばく露は影響しなかった。また、出生後の豊かな環境での飼育は影響を軽減した。これらの知見は、出生前の長期的な携帯電話ばく露は、高齢の仔に対して生涯にわたる悪影響を生じ、シナプス可塑性を混乱させることで認知を阻害するが、これらは出生後の豊かな環境での飼育によって回復できることを示唆している、と著者らは結論付けている。
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