この論文の著者らは、症状の発症に対する高周波(RF)電磁界への長期的または反復的な局所および全身ばく露の影響を系統的にレビューした。主な仮説は、脳のRF電磁界ばく露に関連した耳鳴り、片頭痛および頭痛、ならびに、全身のRF電磁界ばく露に関連した睡眠障害および複合症状スコアである。少なくとも一週間の局所または全身ばく露が推定される、一般公衆および労働者における症例対照研究および前向きコホート研究を包含した。Web of ScienceおよびMedlineを含む各種のデータベースで系統的な文献検索を実施した。このレビューのトピックにあわせた[米国国家毒性プログラム(NTP)の]健康評価解釈局(OHAT)が策定したツールを用いてバイアスのリスク(RoB)を評価した。無作為効果メタ分析を用いて結果を合成した。その結果、いずれも欧州で実施された、コホート研究8件および症例対照研究1件からの13報、被験者総数486,558人を評価対象に包含した。耳鳴りは3報、片頭痛は1報、頭痛は6報、睡眠障害は5報、複合症状スコアは5報で扱われた。職業ばく露を扱ったのは1報のみであった。優先度の高い5つの仮説のいずれについても、入手可能な研究は、ガイドライン値未満のRF電磁界ばく露は症状を生じないことを示唆しているが、証拠は非常に不確かであった。証拠の確かさが低いのは、研究の件数が少ないこと、一部の研究でバイアスのリスクがあり得ること、一貫性がないこと、直接的でないこと、精度が低いことによる。優先度が高くない仮説については、適格な13報の論文が多数のばく露‐アウトカムの組合せを扱ったが、特定の症状またはばく露源との関連は示されなかった。このレビューのトピックには、交絡因子の調整やばく露評価に関連した様々な難題が含まれる。これらの多くは本質的なもので、今後の研究において容易に解決できるものではない。ワイヤレス通信デバイスからの近傍界ばく露は生活に関連しており、潜在的な生物物理学的影響と、ワイヤレス通信デバイスの多用によるその他の潜在的影響(睡眠不足や身体活動の低下等)とを区別することは特に難題である。今後の研究では、これら二つの仮説上のメカニズムを区別するための、斬新で革新的な手法が必要である。この研究は、RF電磁界の安全性の裏付けとなる、現時点で最善の入手可能な証拠である。ガイドライン値未満のRF電磁界が症状を生じるという兆候はない。但し、本質的な限界のため、相当の不確かさが生じている、と著者らは結論付けている。
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