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ばく露限度値の国際比較

(2016年7月時点の英文ウェブページの和訳です)

電磁界へのばく露に関する法的拘束力のある国際安全基準がないため、各国ではさまざまな国際的ばく露制限ガイドラインをその国の推奨または法的拘束力をもつ規制として実施しています。欧州の場合、欧州連合(EU)の加盟国は欧州議会および理事会の勧告およびガイドラインの拘束を受けます。加盟国は、国内法での規制や法律として、これらの勧告やガイドラインを実施しています。各国は、EUガイドラインに設定された限度値(許容されるばく露の上限値など)を遵守する必要があります。そうではあっても、その国がそれらの最小要求事項よりもさらに厳しい限度値を定めるならば、それも許されます(出典: EU法データベース(Lex Europa) (p. 2))。その結果、世界的にも、欧州域内でも、公衆ばく露および職業ばく露の両方において、さまざまなその国の規制が存在することになりました。高周波および低周波電磁界を発生する携帯電話および家庭電化製品のような日常生活機器の場合、そのエミッションは、製造者に遵守が義務づけられた製品基準によって管理されます(ドイツにおけるばく露限度値(一般公衆))。

WHOは、国際健康観測 (GHO) web portalにおいて、電磁界へのばく露制限に関する世界中の基準の現況を提供しようと計画しています(WHO国際EMFプロジェクト活動報告書2014, p. 13をご覧下さい)。将来的には、それにより世界中の国々の間での基準の全体的比較が可能になるはずです。欧州連合のばく露制限に関する推奨およびガイドライン(一般公衆の場合、EU勧告1999/519/EC;職業者の場合、EU指令2013/35/EU(旧EU指令2004/40/ECと置き換えられたもの))は、欧州の多くの国々での法制化における共通基盤です。この2つガイダンス文書のばく露限度値は、その大部分がICNIRPの推奨から導き出されています。しかし、その推奨およびガイドラインのその国での施行には大きな違いがあります。

ドイツ
では、一般公衆に関する低周波および無線周波電磁界ばく露限度値の遵守は、26. BlmSchV(電磁界に関する政令)で法律として規制されています。さらに、国際的に承認されている製品安全基準(機器からの放出(エミッション)を制限するもの)および職業者防護のためには労災防止規則が適用されます(ドイツにおけるばく露限度値(職業ばく露))。

低周波の範囲に関しては、ドイツ連邦放射線防護局(BfS)がそのウェブサイトoverviewに欧州の規制およびばく露限度値をまとめています。オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)の調査研究は、50 Hz電磁界および移動体通信電磁界GSM-900, GSM-1800, and 2100 MHz UMTS)の範囲で、世界中の国々の一般公衆ばく露および職業ばく露に関するばく露限度値について2011年4月以降の概観を提供しています。

ICNIRPおよびEUが推奨するばく露限度値よりも部分的に厳しい限度値を国内政策に導入した国々に関してとりわけ社会的議論がなされています。そのような例として、低周波の周波数範囲ではオランダおよびスイス、高周波の周波数範囲(特に移動体通信用)ではイタリア、ルクセンブルグ、スイス、ベルギーがあります。注意すべきことは、適用範囲および評価基盤のどちらについても、異なる国の間で直接比較できないことが多いことです。その例を以下に示します。

オランダ
オランダでは、電力線には、ICNIRPガイドラインに準拠した低周波参考レベルが適用されます。しかし、2005年以降、要注意地域での新設電力線に適用されるオランダ社会基盤・環境省の推奨も存在し、それにしたがって磁束密度が0.4 µTを超過しないことが望ましいとされています(出典:Rijksoverheid)。綿密に調べると、これは新規設備に関する地方当局への推奨で、「要注意指定施設」(例えば、住宅、学校、幼稚園、昼間保育園)のある地区と高電圧電力線が一定の距離をとり、小児の0.4 µTを上回る磁界への長期間ばく露が生じないようにするためのものです。ただし、回避が求められる磁界ゾーンの定義は、設備稼働率30%を仮定した年間平均値に基づいています。したがって、例えばドイツの国の限度値(この値は設備の最大稼働率に基づいています)と比較することはできません。さらに言えば、既存電力線の高規格化は新規建設とは見なされないため、この推奨は高規格化された電力線には適用されません。電界に関しては、ICNIRP参考レベルの5 kV/mがそのまま用いられています。社会基盤・環境省とは対照的に、オランダ保健評議会健康問題について政府および議会に助言を行う独立的科学機関)は、より厳しい措置には何ら理由がないとの見解を表明しています(出典: BfS)。

スイス
スイスも、電力線からの50 Hz磁界のイミッションの限度値(すなわち基本制限)は1998年のICNIRP推奨に基づき、100 µTです。これはドイツの参考レベルと同等です。しかし、エミッションのプレコーション的制限として、スイスの“非電離放射線防護に関する政令” (NISV)は、2000年2月1日以降に建設された設備の磁界に関して、1 µTの参考レベル(いわゆる「設備限度値」)を設定しています。ここで、イミッションとエミッションの区別が重要です。なぜならば、スイスでもイミッションの限度値は依然として100 µTであるからです。したがって、同じ状況に対して2つの大きくかけ離れた限度値が存在しています。この政令には、電界強度に関する設備限度値の規定はありません。

また、無線周波電磁界の範囲でも、2000年のこの政令は全ての公衆立ち入り可能区域にICNIRPに準拠した基本制限を採用しています。ただし、携帯電話基地局に関しては、低い電界強度設備限度値が存在し、それはICNIRP推奨の限度値の10分の1です。その他の送信機およびレーダに関しては、その設備限度値は周波数に依存して低下し、対応するICNIRP限度値の3パーセントの低値にまでなります。

イタリア
イタリアでは、無線周波の範囲においてICNIRPガイドラインからの隔たりがあり、ICNIRPガイドラインでは周波数依存的である3 MHzから3 GHzまでの範囲の参考レベルが一定値となっています。例えば、移動体通信周波数である900 MHzでの磁界強度限度値は、ICNIRP推奨の限度値の45パーセントになります。同様に、電力密度に関しては22パーセントです。「要注意利用」が指定されている場所(学校および幼稚園など)、および人々が4時間以上滞在する可能性がある場所では、さらに低い限度値が適用されます。これらの限度値も、新規設備に適用されるものです。

ベルギー
ベルギーでは、フランドル地方およびブリュッセルで、特に低い限度値が採用されています。移動体通信の周波数範囲での限度値部分的に、対応するICNIRP推奨の限度値のほんの0.5パーセントです。

米国
米国では、電力線からの低周波電磁界制限するための統一的な法律はありません。一部の州(コロラド、コネチカット、ハワイ、メリーランド、オハイオ)では、「慎重なる回避(プルーデント・アボイダンス)」が適用されています。これは、住民の60Hz電磁界ばく露制限することが望ましいが、ただし合理的な費用において、とされています(出典: EMF Portal)。他の州(フロリダ、ミネソタ、モンタナ、ニュージャージー、ニューヨーク、オレゴン)では、電力線からの電磁界に関する一定値の限度値を採用しており、その値は欧州理事会勧告1999/519/ECの参考レベルの0.2倍からほぼ2.5倍まで範囲に入ります(出典: EMF Portal)。

無線システムに関しては、連邦政府の法律が欧州理事会勧告と同一の基本制限を設定しています。しかし、計算モデルが違うため、参考レベルはやや高くなっています(例えば900 MHzにおいて、電界および磁界強度は約5分の1、電力密度は約3分の1だけ高いです)。