研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[1961-1979年のスウェーデンの鉄道作業者における一部のがんの発生率] epidem.

Incidence of selected cancers in Swedish railway workers, 1961-79

掲載誌: Cancer Causes Control 1994; 5 (2): 189-194

1960年で20-64歳でスエーデンの労働者から鉄道作業員を選び、白血病リンパ腫脳腫瘍乳がん下垂体腫瘍発生率を比較した。以前行った鉄道作業員の白血病脳腫瘍リスクの増加を示していない1961-1979年の発生率データを再解析した。本研究は、2つの10年間の追跡調査を分け、相対リスクRR)の上昇が最初の10年で見られた。この10年間では、運転手と車掌を統合した慢性リンパ性白血病骨髄白血病リンパ腫のRRは、それぞれ1.9(95%CI=0.9-4.0), 1.4(95%CI=0.4-4.3), 1.0(95%CI=0.5-1.9)であった。全脳腫瘍は、RRは1.2(95%CI=0.8-1.9)、30歳以下での脳腫瘍リスクはRR=12.2, CI=2.8-52.5)であった。運転手と車掌の中で乳がんが3症例、下垂体腫瘍が9症例見られ、それぞれRRは4.9(CI=1.6-11.8)、3.2(CI=1.6-6.2)であった。鉄道での作業は高い磁界ばく露される。これら結果は、電磁界とある種のガンタイプとの関連性の仮説を支持する。下垂体での結果はホルモンの調節と関係することを示唆している。

研究の目的(著者による)

スウェーデンの鉄道作業者において、白血病リンパ腫、脳、乳房、下垂体腫瘍発生率を調査した。

詳細情報

本研究は、Floderus et al (1993) の再分析である。この研究では、1961-1979年の発生率データで、鉄道作業者の白血病及び脳腫瘍リスク上昇が示されなかった。本研究では、追跡期間を1961-1969年と1970-1979年に分割した。これは、鉄道産業において構造的変化があったため、ばく露群の被験者の大集団が高レベルの電磁界ばく露されていたのは極初期のみで、これによって潜在的影響が希釈されたかも知れないことを意味するためである。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ:

ばく露

ばく露集団

グループ 説明
集団 1 機関士
集団 2 車掌
集団 3 機関士及び車掌
集団 4 鉄道作業者(駅長、鉄道発車係、鉄道助手及び保線要員)
集団 5 鉄道業界の作業者

調査対象集団

その他:

1961-1969年で17,150,940人-年、1970-1979年で19,056,600人-年

結論(著者による)

全体として、ばく露群については最初の10年間に推定値の上昇があるようである。これは次の10年間には見られない。
最初の10年間には、機関士及び車掌を合わせた相対リスクRR)は、慢性リンパ球白血病について1.9(CI 0.9-4.0)、急性骨髄性白血病について1.4(CI 0.4-4.3)、リンパ腫について1.0(CI 0.5-1.9)であった。脳腫瘍全体については、RRは1.2(CI 0.8-1.9)で、30歳未満についての推定値はより高かった(RR 12.2、CI 2.8-52.5)。機関士及び車掌には、乳がんの症例3人及び下垂体腫瘍の症例9人が生じた(それぞれについて、RR 4.9、CI 1.6-11.8;RR 3.2、CI 1.6-6.2)。<BR> 著者らは、この結果は鉄道作業者における電磁界とある種のがんとの関連についての仮説に対し、若干の指示を与えるものであると結論付けている。

研究の限界(著者による)

職種は1960年のベースラインのみで定義されているため、潜在的な職種の変更は盛り込まれていない。

研究助成

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