研究のタイプ: レビュー/サーベイ論文

[妊娠および出生アウトカムに対する高周波電磁界ばく露の影響:ヒト以外の哺乳類についての実験研究の系統的レビュー] review

Effects of Radiofrequency Electromagnetic Field (RF-EMF) exposure on pregnancy and birth outcomes: A systematic review of experimental studies on non-human mammals

掲載誌: Environ Int 2023; 180: 108178

世界保健機関WHO)は、高周波RF電磁界ばく露健康への悪影響との関連についての証拠を系統的にレビューする国際プロジェクトをコーディネートしている。このプロジェクトでは、専門家グループによって6つのトピックに優先順位が与えられ、その中にはリプロダクティブ・ヘルスに関するアウトカムが含まれる。この研究は、2021年に発表されたプロトコルに従い、妊娠中のRF電磁界ばく露による実験動物の仔への悪影響についての系統レビューおよびメタ分析を実施した。3つの電子データベース(PubMed、ScopusおよびEMF-Portal)を2022年9月8日または17日に最後に検索した。事前に定義された選択クライテリアに基づき、取得した参考文献を2人のレビューアーがスクリーニングし、以下のクライテリアを満たす研究を包含した:1) 原著で、擬似ばく露対照群のある、子宮ばく露したヒト以外の哺乳類についての実験研究で、査読付き学術誌に掲載済み、2) 実験的RF電磁界ばく露が100 kHz-300 GHzの周波数範囲内、3) 繁殖力(同腹仔の数、胚/胎児の喪失)、出生時の仔の健康(体重または身長の低下、先天的形成異常性比の変化)、または遅発的影響(神経認知の変化、雌の不妊またはがんの早期発生)に対する実験的なRF電磁界ばく露の影響を調べた。二人のレビューアーが研究の特徴およびアウトカムデータを抽出した。米国国家毒性プログラム(NTP)の健康評価解釈局(OHAT)のガイドラインを用いてバイアスリスク(RoB)を評価した。RoBが「強く懸念される」研究を除外した後、平均ばく露と非ばく露を比較する変量効果メタ分析、ならびに、全てのばく露量を用いた量‐反応メタ分析において研究結果をプールした動物種、比吸収率SAR)および温度上昇についてのサブグループ分析を実施した。GRADEアプローチ[医療におけるエビデンスの質と推奨の強さをグレーディングする手法]を用いて証拠の確かさを評価した。その結果、88報の論文をレビューに包含した。繁殖力への影響:4.92 W/kgの全身平均SARで実施した、同腹仔の数への影響についての研究のメタ分析では、RFばく露の影響は認められなかった(平均差(MD)0.05、95%信頼区間(CI)-0.21 - 0.30)。20.26 W/kgの全身平均SARで実施した、再吸収された、または死亡した胎児についてのメタ分析では、ばく露群での発生率有意な上昇が認められた(オッズ比OR)1.84、95% CI 1.27 - 2.66)。量‐反応関係についての分析でも結果は同様であった。出生時の仔の健康への影響:9.83 W/kgの全身平均SARで実施した、胎児の体重についての研究のメタ分析では、ばく露群での僅かな上昇が認められた(標準化平均差(SMD)0.31、95% CI 0.15 - 0.48)。4.55 W/kgの全身平均SARで実施した、胎児の身長についての研究のメタ分析では、出生時身長の中程度の低下が認められた(SMD 0.45、95% CI 0.07 - 0.83)。6.75 W/kgの全身平均SARで実施した、形成異常のある胎児の割合についての研究のメタ分析では、ばく露群での中程度の増加が認められた(SMD -0.45、95% CI -0.68 - -0.23)。16.63 W/kgの全身平均SARで実施した、形成異常のある胎児のいる同腹仔の発生率についての研究のメタ分析では、統計的に有意なRFの悪影響が認められた(OR 3.22、95% CI 1.9 - 5.46)。この結果は量‐反応分析でも同様であった。仔の健康に対する遅発的影響:RFばく露は脳重量(SMD 0.10、95% CI -0.09 - 0.29)ならびに学習および記憶機能への悪影響(SMD -0.54、95% CI -1.24 - 0.17)とは関連していなかった。RFばく露は運動活動機能への強い悪影響(SMD 0.79、95% CI 0.21 - 1.38)ならびに運動および感覚機能に対する中程度の悪影響(SMD -0.66、95% CI -1.18 - -0.14)と関連していた。RFばく露は、F2の雌の仔が妊娠した同腹仔の数の低下とは関連していなかった(SMD 0.08、95% CI -0.39 - 0.55)。神経行動学的影響についてのメタ分析は少数の研究に基づいており、独立した追試は極少数の研究室に由来するものしかなかった。RF電磁界ばく露と同腹仔の数との関連がないという証拠には高い確かさがあった。胎児の体重に対する僅かな悪影響の証拠には、中程度の確かさが与えられた。仔の脳重量に対する遅発的影響がないという証拠にも、中程度の確かさが与えられた。このメタ分析で評価したその他のほとんどのエンドポイントについては、RF電磁界の悪影響が認められたが、その証拠には低い、または非常に低い確かさが与えられた。証拠は全体として限界があり、RF電磁界が良く知られた熱による悪影響を惹起するよりも低いばく露レベルで妊娠アウトカムに影響を及ぼし得るかどうか、評価できなかった。同腹仔の数および胎児の体重についての実験動物における研究のメタ分析にそれぞれ基づき、子宮内でのRF電磁界ばく露は、繁殖力に悪影響を及ぼすことはなく、出生時のこの健康に影響を及ぼす可能性がある。子宮ばく露によって生じるかもしれない遅発的影響に関しては、RF電磁界ばく露は仔の脳重量にはおそらく影響せず、雌の仔の妊孕性を低下させるかもしれない。他方、RF電磁界神経行動学的機能に悪影響を及ぼすかもしれず、異なるエンドポイントによってその程度はまちまちで、不確かさが非常に大きい、と著者らは結論付けている。

ばく露

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