研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[ヒトの骨肉腫細胞での高磁束密度の磁界(50Hzで400mT)に誘導された突然変異の野生株p53発現による抑制] med./bio.

Suppression of high-density magnetic field (400 mT at 50 Hz)-induced mutations by wild-type p53 expression in human osteosarcoma cells

掲載誌: Biochem Biophys Res Commun 1998; 243 (2): 579-584

<目的>p53の誘導発現システムを使ってヒト骨肉腫細胞(Saos-LP-12)を高磁束密度磁界(400mT、50Hz)にばく露し、HPRT遺伝子突然変異を解析する。 <方法>ヒト骨肉腫細胞(Saos-LP-12)を用いた。この細胞はIPTG処理により野生型p53を発現する磁界は(400mT、50Hz)でばく露した。突然変異はHPRT遺伝子を選び、シークエンスにより突然変異スペクトルの解析を行った。 <結果>(400mT、50Hz)磁界ばく露で観察された突然変異頻度の上昇は、p53発現誘導により抑制された。つまり、細胞のチェックポイント機能に関与するp53が磁界誘発突然変異抑制することを示している。しかし、突然変異スペクトルの解析結果から、磁界に特異的な突然変異型は観察されなかった。

研究目的(著者による)

超低周波磁界ばく露後のDNA修復及びDNAの安定性維持における野生型のp53タンパク質の役割を評価すること。

詳細情報

ヒト骨肉腫細胞誘導可能な野生型のp53で遺伝子導入)を、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT遺伝子の変異体発生頻度(同遺伝子における6-チオグアニン耐性突然変異誘導)及び変異体スペクトル(例:遷移、欠失挿入)で比較した。
HPRTは、プリン(例:グアニン合成経路にある酵素の一つである。HPRT陰性細胞はGTP合成グアニンを用いることができないため、この塩基を新たに合成しなければならない。HPRT陽性細胞は、ヌクレオチド合成の際にグアニンの類似物である6-チオグアニンを用いる。但し、6-チオグアニンの組み込みはDNA及びRNA損傷につながり、これは細胞にとって致命的である。対照的に、HPRT陰性細胞は6-チオグアニンを利用することができず、生き延びる。

HPRT遺伝子突然変異アッセイは、プリン類似物の6-チオグアニンに耐性のあるクローンの選択に基づく、十分に確立された変異原性アッセイである。HPRT遺伝子における6-チオグアニン耐性変異の誘導の決定では、ばく露される細胞を6-チオグアニンを含む媒質培養する。
実験を3回反復した。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 4 h

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
ばく露時間 continuous for 4 h
Additional information The magnetic field was oriented vertically.
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • magnetic cores and copper coils
チャンバの詳細 An acrylic CO2 incubator was installed in the inner space between cores which housed the annular plates.
ばく露装置の詳細 magnetic cores (silicon steel plates) 240 x 340 mm, 40 mm apart; 2 copper coils penetrating through them
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 400 mT unspecified 指定なし - -
電流密度 766 A/m² mean 指定なし - -

Reference articles

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

磁束密度超低周波界へのヒト骨肉腫細胞のばく露は、HPRT遺伝子突然変異を生じる。
この細胞における突然変異は、400mTの超低周波磁界ばく露の際に導入した野生型のp53遺伝子発現によって抑制された。
ばく露されたp53導入細胞ばく露されたp53非導入細胞、偽ばく露細胞で、突然変異スペクトルに顕著な差は認められなかった。
我々の知見は、野生型のp53には、高磁束密度超低周波磁界ばく露後のDNA複製エラーの抑制及び/またはゲノム安定性の維持における機能があることを示唆している。

研究の種別:

研究助成

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