研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[電気毛布または加温ウォーターベッドの使用と前立腺がんとの関連] epidem.

Prostate cancer in relation to the use of electric blanket or heated water bed

掲載誌: Epidemiology 1999; 10 (1): 83-85

<目的>電気毛布は家庭において最も強い電磁界曝露源の一つと見られるが、これまでこの曝露と前立腺がんリスクについて研究は公表されていなかった。電磁界曝露によるメラトニン生産の減少のために前立腺がんリスクが高くなるかもしれないという理論を検討するために、この研究を行った。 <方法>GHCによって1989-1991年の間に診断された40~69歳の原発性の前立腺がん患者を対象とした。対照グループはそれぞれの症例に年齢のマッチした2名の前立腺がんのないヒトをGHCのメンバーの中から任意に選定した。症例11名、対照64名が除外され、最終的に参加を承諾したヒトは症例175、対照258名となった。情報を収集するため質問書を対象者に郵送し、電気器具の使用についての状況、交絡因子となる多数の要因について調査した。OR及び95%CIはロジスティック回帰によって算出した。 <結果>人口統計的な変数については、症例と対照は同様であることが表1に示されている。表2においては、症例は対照に比べて3種類の電気加熱器具のどれかを使用してきた可能性がより高いことを示している(OR 1.4 95%CI 0.9-2.2)。それにもかかわらず、ベッドを加熱するだけの目的で器具を使用しているヒトに比べて、睡眠時の大部分電気毛布または水ベッドを使用しているヒトのリスクは高くはない。このデータを使用年数、年間の使用月数、その両方を掛け合わせた数について見ても、一定の量ー反応の関係は得られない。

研究の目的(著者による)

電気毛布または加温ウォーターベッドの使用と前立腺がんリスクとの関連を調査するため、米国で症例対照研究を実施した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (オッズ比(OR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 電気毛布または加温ウォーターベッドを使用したことがある:いいえ
集団 2 電気毛布または加温ウォーターベッドを使用したことがある:はい
参照集団 3 使用モード:使用せず
集団 4 使用モード:加温のみ
集団 5 使用モード:ほとんどの時間
参照集団 6 使用年数:なし
集団 7 使用年数: 1 - 5
集団 8 使用年数: 6 - 10
集団 9 使用年数: 11 - 15
集団 10 使用年数: 16 - 20
集団 11 使用年数: ≥ 21
参照集団 12 一年あたりの使用月数:なし
集団 13 一年あたりの使用月数: 1 - 3
集団 14 一年あたりの使用月数: 4 - 6
集団 15 一年あたりの使用月数: 7 - 9
集団 16 一年あたりの使用月数: 10 - 12
参照集団 17 使用月数の合計:なし
集団 18 使用月数の合計: 1 - 50
集団 19 使用月数の合計: 51 - 100
集団 20 使用月数の合計: 101 - 150
集団 21 使用月数の合計: ≥ 151

調査対象集団

症例集団

対照集団

調査規模

症例 対照
適格者 255 456
参加者 186 322
参加率 73 % 71 %
評価可能 175 258
統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

電気毛布または加温ウォーターベッドを使用していた男性では、電気式ベッド加温装置を使用していなかった男性と比較して、統計的に有意ではない前立腺がんリスク上昇が認められた(OR 1.4、CI 0.9-2.2)。但し、年間使用月数または使用年数の増加に伴ってリスクが高くなる傾向はなかった。
著者らは、本研究は電気毛布または加温ウォーターベッドの使用と前立腺がんリスクとの関連についての明確な証拠を提示しなかった、と結論付けた。

研究の限界(著者による)

電気毛布または加温ウォーターベッドへのばく露は、たった一つの質問で評価したので、使用習慣の違い(電気毛布の使用はより季節的で、一日のうち僅か数時間であるのに対し、加温ウォーターベッドは一年中で、夜間を通じて使用する)及び発生源の磁界強度の違いが十分に含まれていなかった。

研究助成

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