研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[60Hz磁界を用いたF0F1-ATPアーゼの加水分解活性の強化] med./bio.

Enhancement of the hydrolysis activity of F0F1-ATPases using 60 Hz magnetic fields

掲載誌: Bioelectromagnetics 2009; 30 (8): 663-668

この研究は、ATP合成酵素ATPase)の活性に対する超低周波(ELF)磁界の影響を調べた。ATPaseの構造は、プロトン勾配を回転運動に変換する膜部分の F(0)モータと、ATPを合成する触媒部分の F(1)モータからなるため、F(0)F(1)-ATPaseと表現される。異なる磁束密度の60 Hz磁界ばく露した場合、0.3および0.5 mTの磁界加水分解活性が増強されたが、0.1mTでは有意な変化が見られなかった。F(0)F(1)-ATPaseをN、N-ジシクロヘキシルカルボジイミドにより阻害した場合においてさえ、その加水分解活性は0.5 mT 60Hzの磁界によって増強された。さらに、F-DHPEで標識された色素胞に0.5 mT、60 Hzの磁界ばく露を与えた場合、色素胞の外膜のpHは変化しないことが示され、このことから、磁界はF0の活性には影響しないと解釈された。以上の知見から、F(0)F(1)-ATPaseの加水分解活性に対する磁界の影響には磁束密度依存性があること、閾値は0.1 - 0.3 mTであること、影響のエンドポイントはF1である可能性が示された、と報告している。

研究目的(著者による)

色素懸濁液における膜F0F1-ATPアーゼの酵素活性健康に影響を及ぼし得る段階的事象の最初のステップの可能性がある)に対する超低周波電磁界の影響を調べること。

詳細情報

F0F1-ATPアーゼは、膜に埋め込まれた部分のF0と、親水性触媒部分のF1からなる。F0F1-ATPアーゼは2つの主要な「エネルギーの流れ」(陽子とATPの膜貫通電気化学電位差)を相互変換する。

F0F1-ATPアーゼを、N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCD、F0サブユニットの抑制のため)及び塩化リチウム(加水分解抑制のため)で処理した。加えて、色素胞をpHインジケータF-DHPEでラベル付けした(陽子輸送実験(F0の機能は陽子の輸送である))。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 60 Hz
ばく露時間: continuous for 20 min

ばく露1

主たる特性
周波数 60 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
ばく露時間 continuous for 20 min
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 two 12 cm x 6 cm rectangular coils; each coil consisting of two sub-coils with 100 turns of 1 mm copper wire each, separated by 7 cm; non-uniformity of the magnetic field in the exposue aerea < 2%
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 0.1 mT minimum 測定値 - -
磁束密度 0.5 mT maximum 測定値 - -

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

60Hz磁界はF0F1-ATPアーゼの酵素活性を高めた。この影響は磁界強度に依存していた:0.3及び0.5mT磁界加水分解活性を高めたが、0.1mT磁界ばく露有意な変化を生じなかった。磁界は主にF1サブユニットに影響した:DCCDがF0F1-ATPアーゼを抑制した(F0を抑制した)としても、0.5mT磁界加水分解活性を高めた。更に、F-DHPEでラベル付けした色素胞を0.5mTにばく露したところ、色素胞の外膜のpHは変化しなかった。

このデータは、ヒトの健康に対する磁界の影響と、膜F0F1-ATPアーゼに対する磁界の影響との関連を探求する新たな方法を示しているかも知れない(F1が磁界による影響の標的かも知れない)。

研究の種別:

研究助成

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