研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[交感神経ニューロンは神経突起伸長を制御するために神経成長因子前駆体変換を介してMMP-2およびMT1-MMPを発現および分泌する] med./bio.

Sympathetic neurons express and secrete MMP-2 and MT1-MMP to control nerve sprouting via pro-NGF conversion.

掲載誌: Cell Mol Neurobiol 2011; 31 (1): 17-25

この研究は、著者らの先行研究(高周波電界刺激(HFES)は交感神経細胞(SN)での神経突起伸長を誘発すること、これにはチロシンキナーゼA受容体(TrkA)を標的とする神経成長因子NGF)の増加が関与することを報告)をさらに研究するために、HFES条件下のSNにおけるマトリックスメタロプロテイナーゼ-2(MMP-2)およびその主要な活性化因子であるMT1-MMPならびにその阻害剤であるTIMP-1の調節と働きを調べた。その理由は、ニューロン成長へのMMP-2の効果が報告されているからである。さらに、アンジオテンシンIIタイプI受容体(AT-1)の阻害剤であるロサルタンがHFES誘発性の神経突起伸長に与える効果も調べた。新生仔ラットの上頸神経節(SCG)由来のSN細胞培養に、5または50 Hzの周波数で、48時間の電気刺激を与えた。その結果、HFESはMMP-2とMT1-MMPのmRNAとタンパク質発現を増加させたが、TIMP-1の発現に変化はなかった;HFES下で、プロMMP-2からアクティブMMP-2へのシフトが観察されたことから、MMP-2酵素活性の増加が示された;薬剤によるMMP-2阻害は、細胞培養上清中のプロNGF量を増加させ、HFES誘発性の神経突起伸長を有意に減少させた;ロサルタンは、HFES誘発性のNGF、MMP-2、およびMT1-MMP増加を抑制することで神経突起伸長効果を完全に抑制した、と報告している。

研究目的(著者による)

電気刺激条件下の交感神経において、マトリックスメタロプロテイナーゼ-2とその主な活性化因子「膜タイプ1-マトリクスメタロプロテイナーゼ」(MT1-MMP)、ならびにその抑制剤TIMP-1の発現、制御及び機能を調べること。

更に、「アンジオテンシンIIタイプI受容体」(AT-1)阻害剤、ロサルタンの有益な影響の分子メカニズムを分析した。これは、アンジオテンシン受容体阻害剤は血圧低下とは独立して心房細動の再発を減らすことが示されているためである。

詳細情報

著者らは先行研究( Saygili他、2010 参照)で、交感神経ニューロン電界刺激神経成長因子上方制御によって神経発芽を生じることを示している。マトリクスメタロプロテイナーゼ-2は、細胞外マトリクス代謝回転に関与するだけでなく、神経成長の際の有益な影響も生じるかも知れないことを示す証拠が増加している。

出生後1-3日齢のSprague-Dawleyラットからの上頸神経節の初代培養を実施した。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 5 Hz
Modulation type: pulsed
ばく露時間: continuous for 48 hr
ばく露2: 50 Hz
Modulation type: pulsed
ばく露時間: continuous for 48 hr

ばく露1

主たる特性
周波数 5 Hz
タイプ
  • electric field
ばく露時間 continuous for 48 hr
Modulation
Modulation type pulsed
Pulse width 1 ms
Pulse type biphasic
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • C-PaceEP external pacing system
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
電界強度 2 V/cm - - - -

ばく露2

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • electric field
ばく露時間 continuous for 48 hr
Modulation
Modulation type pulsed
Pulse width 1 ms
Pulse type biphasic
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • E1と同じ装置
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
電界強度 2 V/cm - - - -

Reference articles

  • Saygili E et al. (2010): [交感神経ニューロンの電気的刺激はTrkA介在性のNGFのオートクリン/パラクリン作用を誘導する]

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

電気刺激は、マトリクスメタロプロテイナーゼ-2ならびにMT1-MMPの遺伝子発現及びタンパク質発現を増加させたが、TIMP-1発現は変化しないままであった。

特定の薬理学的なマトリクスメタロプロテイナーゼ-2の抑制は、細胞培養上澄み液中のpro-NGFの量の増加に寄与し、電界による神経突起伸長を有意に減少させた。

ロサルタンは、電界によるNGF、マトリクスメタロプロテイナーゼ-2、MT1-MMPの上方制御を防止することで、電界による神経発芽を有意に排した。

電気刺激によるマトリクスメタロプロテイナーゼ-2分泌及び活性化がNGFシグナル伝達に依存したかどうかを調べるため、NGF中和抗体を用いた機能喪失実験を実施した:NGF中和は、電界によるマトリクスメタロプロテイナーゼ-2分泌及び活性化を低下させなかった。

本研究の主な知見は以下の通り:a) 上頸神経節は電気刺激下では、pro-NGF変換を介して神経発芽を制御するため、マトリクスメタロプロテイナーゼ-2分泌及び及びMT1-MMPを発現・分泌する;b) 電界による交感神経の発芽は、ロサルタンまたは2つの異なるメカニズムを通じたマトリクスメタロプロテイナーゼ-2の抑制によって防止できる;c) 電気刺激によるマトリクスメタロプロテイナーゼ-2の活性化はNGFシグナル伝達に依存しなかった。

まとめると、特定のマトリクスメタロプロテイナーゼ-2の阻害は、pro-NGF変換の抑制によって交感神経の発芽を防止するが、ロサルタンは総NGF、マトリクスメタロプロテイナーゼ-2及びMT1-MMPの発現を低下させることで、電界による交感神経発芽を排する。

研究の種別:

研究助成

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