この研究は、THP-1細胞におけるマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の活性と発現に対する電磁界(EMF)の影響を分析した。MMPおよびMMPの組織阻害剤(TIMP)は、生理学的および病理学的プロセスの両方における組織リモデリングの主な決定要因である。細胞を50Hz、1 mTのEMFへの24時間ばく露後に、リポ多糖(LPS)存在下(細胞活性化の陽性対照)および非存在下で培養した。その結果、EMFばく露を受けたTHP-1細胞で、抗酸化酵素の活性低下およびiNOS経路に関与する窒素中間体の増強が生じることが示された。そこで、EMFばく露細胞におけるMMPの活性の増加におけるTIMP-1のニトロ化の役割を分析した。分子モデリングツールを用いて、TIMP-1のアクティブな立体配座として妥当な、少なくとも2つのタンパク質部位を同定した。活性窒素種(RNS)は、タンパク質標的に影響を与える可能性があるため、TIMP-1は、スルフィドリル基の酸化またはチロシン残基のニトロ化によって、MMP活性の調節に役割を持つ可能性がある。以上の結果は、MMPとその同族の阻害剤TIMP-1の不均衡につながる経路が示唆されたこと、すなわち、酸化ストレス/ニトロソ化ストレス因子とMMP活性化との関連が電磁界ばく露によって変化するかも知れないことが示唆された、と報告している。
THP-1細胞における酵素活性及びマトリクスメタロプロテイナーゼの発現に対する電磁界の影響を調べること。
LPSあり/なしで細胞をインキュベートした(細胞活性化の陽性対照として)。
生理学的条件下では、マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)のタンパク質分解活性は、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)によって制御される。正常な細胞機能の維持には、MMPとTIMPとのバランスが乱されないことが必要である。
ばく露 | パラメータ |
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ばく露1:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 24 h
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celles were treated in four groups: i) sham exposure ii) EMF exposure iii) incubated with LPS iv) incubated with LPS and exposed to EMF
周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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波形 |
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ばく露時間 | continuous for 24 h |
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | 22 cm long solenoid with a radius of 6 cm and 160 turns of 1.25 x 10-5 cm diameter copper wire; solenoid placed inside an incubator with a constant temperature of 37°C and 5% CO2 atmosphere; cell cultures located at the center region of the solenoid; field homogeneity in the exposure area = 98% |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 1 mT | effective value | 測定値 | - | - |
電磁界ばく露は、自発的なマトリクスメタロプロテイナーゼ-9(MMP-9)のmRNA発現の弱い増加を生じたが、マトリクスメタロプロテイナーゼ-2(MMP-2)のmRNA発現についてはより強い誘導が認められた。電磁界ばく露はLPSによるMMP-9のmRNA発現を強めたが、MMP-2については程々の影響が見られた。
電磁界ばく露細胞では、MMP-9のmRNAレベルに応じて、MMP-9の溶菌の酵素活性がより強められた。LPSと電磁界ばく露の組合せは、LPS単独で処理した細胞と比較して、MMP-9酵素活性を上昇させた。但し、MMP-2酵素活性はLPS刺激でも電磁界ばく露でも変化しなかった。
ばく露細胞では対照と比較して、iNOSの酵素活性、mRNA発現及びタンパク質発現が高かった。電磁界とLPSへの共ばく露は、LPS単独処理細胞と比較して、iNOSのmRNA発現の低下、タンパク質発現のあまり効果的でない誘導を生じた。
電磁界ばく露した細胞は、抗酸化酵素(スーパーオキシドジスムターゼ及びカタラーゼ)の活性の減少、及びiNOS経路に関与する窒素中間体(cGMP)の増強を生じた
電磁界ばく露は対照細胞と比較して、TIMP-1酵素活性を顕著に低下させた。TIMP-1の活発な立体配座における一番もっともらしいニトロ化部位を同定するため、分子モデリングを採用した。
これらの結果は、MMPとその阻害剤であるTIMP-1との不均衡につながる経路を示唆しているかも知れない。著者らは、酸化ストレス/ニトロソ化ストレス要因とMMP活性化との関連が、電磁界ばく露によって変化するかも知れない、と結論付けている。この影響は、多くの疾病プロセスにおいて有意な役割を担っているかも知れない。
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