研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[女性の抑うつ症候群と高圧送電線への住居の近接度] epidem.

Depressive symptomatology in women and residential proximity to high-voltage transmission lines

掲載誌: Am J Epidemiol 1994; 139 (1): 58-63

<目的>より客観的な抑鬱症状の検定と磁界測定によって、症状の現れやすい婦人を対象として、送電線磁界への暴露と抑鬱症状の発症との関連の有無を検討することを目的とする。 <方法>カルフォルニアオレンジ群での220kV、66kVの高圧送電線下権益地周辺と1ブロック離れた地点の住宅500を調査し、76名で計152名の協力者を得た。訪問面接は20分間とし、バイアスの介入を避けるため、調査目的は知らせなかった。調査時玄関でEMDEX-Cメータで磁界を測定した。抑鬱症状はCES-D法によった。さらに健康状態、これまでの出来事、家族歴、健康維持習慣、職業、家庭生活などを質問した。 <結果>(1)磁界測定値H,送電線付近住宅では平均、4.86mG(CI:4.26-5.47)、1ブロック離れた住宅では0.68mG(CI:0.62-0.75)であった。測定時間の違いによる変動はそれほど大きくなかった。(2)CES-Dのスコア分布は曲がった形をしているが送電線との距離との関連はなかった(図1)。(3)CES-Dのスコアを平均値で二分し、送電線からの距離、人種、年齢、教育程度、年収等でオッズ比を計算したが、抑鬱との関連はなかった。居住期間が長くなるにつれ、抑鬱傾向が軽くなる傾向が見られたが有意ではなかった(表1)。著者はより最近移り住んだ人ほど抑鬱の程度が大きい傾向を認めているが、それを確認するためにはサンプルサイズが小さいと述べている。また今後の研究ではEMFに敏感な人に対する影響に注意する必要を述べている。

研究の目的(著者による)

女性の抑うつ症候群と、電力線への住居の近接度との関連を調査した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ:

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 電力線から一区画離れた場所に住む女性
集団 2 電力線の近くに住む女性

調査対象集団

調査規模

タイプ
合計 250
評価可能 152
統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

住居が電力線の近くにある回答者の玄関で取得した磁界レベルは平均して、一区画離れた場所に住む回答者の玄関で取得したものよりも遥かに高かった(グループ2:0.486µT、CI 0.426-0.547;グループ1:0.068µT、CI 0.062-0.075)。電力線の近くに住む女性は、一区画離れた場所に住む女性と比較して、抑うつ症状の増加をより多く報告するようだということはなかった(OR 0.94;CI 0.48-1.85)。
著者らは、一区画離れた場所の住民と比較して、架空送電線の近くに住む女性における抑うつ症候群の認識可能な増加は認められなかったと結論付けている。

研究助成

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