研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[高電圧変電所における超低周波電磁界ばく露が睡眠の質に及ぼす影響] epidem.

Effect of extremely low frequency electromagnetic field exposure on sleep quality in high voltage substations

掲載誌: Iranian J Environ Health Sci Eng 2012; 9 (1): 15

この研究は、超低周波電磁界(ELF-EMFばく露睡眠に与える影響を調査するため、イランのカーマン市とその近郊に在る高電圧変電所(132、230、400 KV)の交代制勤務の男性作業者群(ELF-EMFばく露群)、および高圧変電所と同じ地域だが変電所から遠く離れている、セメント、タイヤ、銅工場の交代制勤務の男性作業者(参照群)における睡眠の質を比較した。調査参加者の排除クライテリアは、喫煙および糖尿病心臓血管疾患・肺疾患などの病歴とした。ELF-EMFばく露群は67人(24 - 57歳)、参照群は110人(24〜50歳)であった。両群の睡眠の質は、連続する3日間の睡眠について回答したピッツバーグ睡眠質調査票(PSQI)で評価した。その結果、ELF-EMFばく露群の90.5 %および参照群の85.3 %が、PSQIにおいて睡眠の質が悪いに分類された(有意差はなし);総睡眠質スコアの平均は、ELF-EMFばく露群で10.22±3.4、参照群で9.74±3.62であった;入眠潜時は、参照群に比べ、ELF-EMFばく露群で有意に長かった;平均睡眠時間は、参照群に比べELF-EMFばく露群の方が短かった、と報告している。

研究の目的(著者による)

高圧変電所の作業者の睡眠の質に対する超低周波電磁界ばく露の影響を調査するため、イランにおいて症例対照研究を実施した。

詳細情報

参加者は連続する3日間について、ピッツバーグ睡眠質調査票に回答した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 セメント、タイヤ、銅産業の交代制勤務作業者
集団 2 高圧変電所の交代制勤務作業者

調査対象集団

症例集団

対照集団

調査規模

症例 対照
適格者 67 110
その他:

132kV変電所の作業者41人、230kV変電所の作業者20人、400kV変電所の作業者6人

統計学的分析方法:

結論(著者による)

測定地点の総数は2583で、そのうち1343地点は磁界、1240地点は電界に関するものであった。測定された電界強度及び磁束密度への職業ばく露は、ICNIRPガイドラインの参考レベルより低かった。
ピッツバーグ睡眠質調査票(症例の90.5%、対照の85.3%)よれば、低い睡眠の質、睡眠質の総スコアの平均、要素スコアについては、症例群と対照群との有意差は認められなかった。入眠までの平均時間は、対照(28.89±20.18分)よりも症例(35.68±26.25分)の方が有意に長かった。症例の平均睡眠時間は5.49±1.31時間で、対照(5.90±1.67時間)よりも短かった。

著者らは、今後の調査では睡眠の質に対する職業ストレス変数(例:残業、低い社会的支援、身体的にきつい仕事、パートタイム労働)のインパクトを含めることと、睡眠ポリグラフ計を用いて睡眠の客観的要因を評価することで、本研究を完遂することを示唆している。

研究助成

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