研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[ストレプトゾトシンで糖尿病を誘発したラットにおける血液脳関門の透過性に対するインスリンあり/なしでの50Hz磁界の影響] med./bio.

Effect of exposure to 50 Hz magnetic field with or without insulin on blood-brain barrier permeability in streptozotocin-induced diabetic rats

掲載誌: Bioelectromagnetics 2010; 31 (4): 262-269

この研究は、変調磁界MF)、インスリン、およびそれらの組み合わせへの長期ばく露が、糖尿病(DM)ラットモデルの血液脳関門BBB)透過性に与える影響を調べた。健康な53匹のラットを無作為に6群に分けた。すなわち、MFばく露群、擬似ばく露群、DM群(ストレプトゾトシン(STZ)誘発性のDM)、DM+MF(DMMF)群、DM+インスリン(I)処置(DMI)群、DM+インスリン(I)+MF処置(DMIMF)群である。MF、DMMF、DMIMF群のMFばく露は、MF(B = 5 mT)に毎日165分間、30日間継続された。すべてのラットは、平均動脈圧(MABP)、体重、および血清グルコースレベルを記録し、実験開始から30日後にBBB評価のためにエバンスブルー(EB)測定を受けた。その結果、MF、DM、DMMF、DMI、およびDMIMF群の脳EBの血管外漏出は、擬似ばく露群のそれよりも高く、DMIMF群の右半球血管外漏出が最も高かった(P < 0.05);30日後のMFばく露群および擬似ばく露群の体重は、DMおよびDMMF群のものより有意に高かった(P < 0.05);DM、DMMF、DMI、およびDMIMF群のベースライン時のグルコース値は、処置後のグルコース値より有意に低かった(P <0.05);以上の知見は、DMおよびMFはBBB透過性を高め、組み合わせばく露はさらにBBB透過性亢進を増強し、インスリンはBBBへのそれらの効果を減少させることが示された、と報告している。

研究目的(著者による)

変調磁界への長期ばく露インスリン、及びそれらの組合せが、糖尿病ラットモデルにおける血液脳関門の透過性(実験開始の30日後)に及ぼす影響を調べること。

詳細情報

血液脳関門に対する糖尿病の影響は矛盾している。

ラット53匹を6群のうちの1つに無作為に割り当てた:1) 偽ばく露;2) 磁界ばく露;3) ストレプトゾトシンで糖尿病誘導:4) 糖尿病磁界ばく露;5) 糖尿病インスリン治療、6) 糖尿病インスリン治療磁界ばく露

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
ばく露時間: 30 min on - 15 min off for 165 min/day on 30 days

General information

rats were divided into six groups: i) sham exposure ii) EMF exposure iii) diabetes mellitus induced iv) diabetes mellitus induced + EMF exposure v) diabetes mellitus induced + insulin therapy vi) diabetes mellitus induced + insulin therapy + EMF exposure

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
ばく露時間 30 min on - 15 min off for 165 min/day on 30 days
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 500 mm long solenoid with a diameter of 210 mm, construced of 140 turns of 1.4 mm insulated soft copper wire wound around a fiber base; rats placed in a 40 cm x 17 cm x 13 cm Plexiglas cage inside the solenoid
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 5 mT - 測定値および計算値 - inside the solenoid

Reference articles

  • Kavak S et al. (2009): [反復的な50Hzパルス電磁界はラットの胸部大動脈リングの弛緩反応における糖尿病による障害を改善する]

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
研究対象とした臓器系:
調査の時期:
  • ばく露前
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

エバンスブルーの溢出は、偽ばく露群(グループ1)よりもグループ2-6で多く、グループ6(糖尿病インスリン治療磁界ばく露)の右半球での溢出が最も高かった。このデータは、ストレプトゾトシンで誘発させた糖尿病は、磁界ばく露の際の血液脳関門の脆弱性を高めるようであることを示している。

平均的な動脈圧の有意な上昇が、ストレプトゾトシンで誘発させた糖尿病ラット全てに見られたが、磁界は更なる影響を生じなかった。偽ばく露及びばく露群(グループ1及び2)の処置後の体重は、「糖尿病群」及び「糖尿病磁界ばく露群」(グループ3及び4)よりも有意に多かった。糖尿病群(グループ3-6)では、ベースライン(処置前)のグルコースのレベルは処置後よりも有意に低かった。

糖尿病及び磁界ばく露血液脳関門の透過性を高める;これらを組合せると、透過性がより高まり、インスリンはその作用を弱める(磁界ばく露の阻害作用を妨げる)。グルコース代謝の改善は、体重減少及び磁界ばく露の血糖低下作用を妨げるかも知れない。糖尿病インスリン治療の有無及び磁界ばく露の臨床的関連を評価するため、更なる研究が必要である。

研究の種別:

研究助成

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