研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[ラット海馬におけるCA2+シグナル伝達及びNMDA受容体の機能に対する超低周波磁界の影響力] med./bio.

Influence of extremely low frequency magnetic fields on Ca2+ signaling and NMDA receptor functions in rat hippocampus

掲載誌: Neurosci Lett 2007; 413 (2): 145-149

超低周波(ELF<300Hz)電磁界は、記憶を含むいくつかの神経活動に影響を与える。ELF磁界が、神経組織において、変化したCa2+のホメオスタシスを起こすので、我々は海馬におけるCa2+信号伝達酵素に、これらの磁界の与える影響を調べ、それをNMDA受容体機能と関連付けた。海馬部位は、生後21日のラットを90日間、50H磁界に、50および100μT強度でばく露し、その脳から得た。対照群と比べて、ELF ばく露細胞内Ca2+レベルの増大を引き起こしたが、それと同時に、Ca2+依存プロテインキナーゼPKC)、cAMP依存プロテインキナーゼ、カルシニューリンの活性も増大し、また、海馬部位におけるCa2+-カルモジュリン依存プロテインキナーゼの活性が低下した。同時のリガンド結合を調べることで、N-メチル-D-アスパラギン酸NMDA受容体への結合が減少したことが明らかになった。これらの結果を合わせると、ELF ばく露によって混乱した神経機能のなかに、変化したCa2+伝達事象があり、それにより、逸脱したNMDA受容体の活動が生じたのかもしれない。

研究目的(acc. to editor)

本研究は、ラット海馬におけるCa2+依存性の酵素活性、及び、それによって生じるかも知れないNMDA受容体の機能との関連に対する、超低周波磁界の影響を分析するために実施した。

詳細情報

3週齢のラットの脳から海馬を得た。各6匹の3つのばく露群を実施した。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
ばく露時間: 90 days

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
ばく露時間 90 days
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
チャンバの詳細 animal movements were measured with a photoelectric sensor connected to the base of the cage and a digital counter
ばく露装置の詳細 two sets of Helmholtz coils with 25 turns each
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 50 µT average over time 測定値 - -
磁束密度 100 µT average over time 測定値 - -

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

ばく露ラット対照群と比較して、特に夜間に身体的活動の増加を示した。
超低周波磁界へのばく露は、細胞内Ca2+レベルの上昇と、これに伴うCa2+依存性の酵素活性(プロテインキナーゼC、cAMP依存性タンパク質キナーゼ及びカルシニューリンタンパク質ホスファターゼ))の上昇、ならびにCa2+-カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼの活性の低下を海馬に生じた。加えて、NMDA受容体へのグルタミン酸結合の減少が認められ、この受容体の活性の低下を示した。
本研究の結果は、磁束密度50µTと比較して100µTでより強調された。

研究の種別:

研究助成

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