研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[耳鳴りと携帯電話使用] epidem.

Tinnitus and mobile phone use

掲載誌: Occup Environ Med 2010; 67 (12): 804-808

この研究は、携帯電話使用と耳鳴りリスクの関連を調べた症例対照研究である。耳鳴り症状が継続している症例100人を同定し、外来患者から性、年齢を個体マッチングした対照を無作為に抽出した。症例の病歴、臨床検査により、耳鳴りの既知の病因を有する患者は除外した。携帯電話使用については、インターフォン研究プロトコルに基づいて評価した。教育年数と都市居住を共変量とし、条件付きロジスティック回帰分析によりORを算出した。その結果、耳鳴りと同側で基準日(耳鳴りの発症日)まで携帯電話使用していた症例群では、規則的使用および累積使用時間についてORは有意に上昇しなかった;携帯電話使用期間が長い場合(4年以上)に、リスク推定値が有意に上昇した(OR = 1.95; 95%CI: 1.00~3.80)、と報告している。

研究の目的(著者による)

携帯電話使用が耳鳴りリスクを高めるかどうかを調査するため、オーストリアにおいて症例対照研究を実施した。

詳細情報

携帯電話のエネルギーは主に、通話時に携帯電話を保持する側の頭部に吸収される。ゆえに、携帯電話使用の側性、即ち、携帯電話を保持する側(同側)、あるいは逆側(反対側)の頭部で後に耳鳴りが生じたかを調査した。携帯電話を一方の側のみで使用していた参加者は少数であったため、各参加者の使用を同側と反対側の分数に分けた。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 携帯電話使用、同側:なし
集団 2 携帯電話使用、同側:あり
参照集団 3 携帯電話使用、反対側:なし
集団 4 携帯電話使用、反対側:あり
参照集団 5 携帯電話使用、全体:なし
集団 6 携帯電話使用、全体:あり
集団 7 アナログ携帯電話の使用期間、同側: < 10分/日
集団 8 アナログ携帯電話の使用期間、同側: ≥ 10分/日
集団 9 アナログ携帯電話の使用期間、反対側: < 10分/日
集団 10 アナログ携帯電話の使用期間、反対側: ≥ 10分/日
集団 11 アナログ携帯電話の使用期間、全体: < 10分/日
集団 12 アナログ携帯電話の使用期間、全体: ≥ 10分/日
集団 13 携帯電話の累積使用時間、同側: < 160時間
集団 14 携帯電話の累積使用時間、同側: ≥ 160時間
集団 15 携帯電話の累積使用時間、反対側: < 160時間
集団 16 携帯電話の累積使用時間、反対側: ≥ 160時間
集団 17 携帯電話の累積使用時間、全体: < 160時間
集団 18 携帯電話の累積使用時間、全体: ≥ 160時間
集団 19 携帯電話の累積通話件数、同側: < 4000
集団 20 携帯電話の累積通話件数、同側: ≥ 4000
集団 21 携帯電話の累積通話件数、反対側: < 4000
集団 22 携帯電話の累積通話件数、反対側: ≥ 4000
集団 23 携帯電話の累積通話件数、全体: < 4000
集団 24 携帯電話の累積通話件数、全体: ≥ 4000
集団 25 携帯電話使用、同側:経験なし、または < 1年
集団 26 携帯電話使用、同側:1 - 3年
集団 27 携帯電話使用、同側: ≥ 4年
集団 28 携帯電話使用、反対側:経験なし、または < 1年
集団 29 携帯電話使用、反対側:1 - 3年
集団 30 携帯電話使用、反対側: ≥ 4年
集団 31 携帯電話使用、全体:経験なし、または < 1年
集団 32 携帯電話使用、全体:1 - 3年
集団 33 携帯電話使用、全体: ≥ 4年

調査対象集団

症例集団

対照集団

調査規模

症例 対照
参加者 100 100
統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

全体として、4年以上の同側使用のサブグループ(OR 1.95;CI 1.00-3.80)以外には、携帯電話使用と耳鳴りについての統計的に有意なリスク上昇は認められなかった。著者らは、高強度及び長期間の携帯電話使用は耳鳴りと関連しているかも知れない、と結論付けた。

研究助成

関連論文