研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[骨芽細胞様細胞におけるシグナル伝達経路に関する細胞コラーゲンに対する超低周波電磁界へのばく露の影響] med./bio.

Effect of exposure to an extremely low frequency-electromagnetic field on the cellular collagen with respect to signaling pathways in osteoblast-like cells

掲載誌: J Med Invest 2008; 55 (3-4): 267-278

この研究は、マウス骨芽細胞様MC3T3-E1細胞の分化に対する超低周波磁界(ELF-MF:3 mT、60 Hz)へのばく露の影響を、インスリン様成長因子I(IGF-I)の添加と共に調べた。分化マーカとして、細胞コラーゲン含有量をイメージング顕微分光法で510〜520 nmの波長で測定されたシリウス赤染色細胞の吸光度により測定した。その結果、ELF-EMFへのばく露により、細胞内コラーゲンが有意に増加した;細胞シグナル調節キナーゼ1/2(ERK1 / 2)活性化の阻害剤であるPD98059の処理は、対照群、IGF-I添加群およびELF-EMFばく露群のすべての細胞コラーゲンを減少させたが、PD98059はELF-EMFばく露によって誘発されたコラーゲンの増加は阻害できなかった;また、IGF-Iも阻害剤の存在下でコラーゲンを増加させた:ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)経路がLY294002によって阻害された場合、ELF-EMFばく露によって誘発されたコラーゲンの増加は加速されたが、IGF-Iの添加によって観察されたコラーゲンの増加は抑制された;p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(p38 MAPK)の阻害剤であるSB203580の処理は、ELF-EMFばく露によって誘発されるコラーゲンの増加を抑制したが、IGF-I添加は阻害剤の存在下でコラーゲンを増加させた;これらの知見は、ELF-EMFばく露によって誘発されたコラーゲン合成がp38 MAPK経路の関与によること、およびPI3K経路がELF-EMFばく露によって誘発されたコラーゲン合成抑制する役割を果たしていること、およびPI3K経路の抑制コラーゲン合成を加速するかもしれないことが示唆された、と報告している。

研究目的(著者による)

マウスの骨芽細胞細胞の分化に対する超低周波電磁界の影響を調べること。

詳細情報

加えて、細胞分化メカニズムへの洞察を得るため、インスリン様成長因子(IGF-1)及びシグナル伝達阻害薬(細胞シグナル制御キナーゼ1/2、ホスファチジルイノシトール3 - キナーゼ、及びp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)と電磁界ばく露の有無の影響を評価した。14及び21日間の培養期間後に細胞を調べた。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 60 Hz
ばく露時間: last 3 days of culture period

ばく露1

主たる特性
周波数 60 Hz
タイプ
  • magnetic field
ばく露時間 last 3 days of culture period
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 coil consisting of primary and secondary windings wound round a polyvinyl chloride container with an inner diameter of 34.5 cm and an outer diameter of 37 cm; primary coil consisting of 150 turns of 2.12 mm enameled wire; second coil separated into two pieces, each made of three layers with 33 turns of 2.12 mm enameled wire; coil placed inside a plastic container; cells inside a CO2 incubator in the center of the coil
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 3 mT - - - -

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
研究対象とした臓器系:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

超低周波磁界へのばく露細胞内コラーゲンを有意に増加させた。
細胞シグナル制御キナーゼ1/2の阻害薬での処理は、調査した全ての細胞対照群インスリン様成長因子I処理群、超低周波磁界への単独ばく露群または共ばく露群)で、コラーゲン量を低下させた。但し、細胞シグナル制御キナーゼ1/2の阻害薬は、ばく露、及びインスリン様成長因子I単独による細胞内コラーゲンの増加を防止しなかった。ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ経路の阻害薬は、ばく露後の細胞内コラーゲンの増加を加速した。但し、インスリン様成長因子Iの添加によって観察されたコラーゲンの増加は抑制された。p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼの阻害薬は、ばく露によるコラーゲン増加を抑制したが、インスリン様成長因子Iの添加は、この阻害薬の存在下でもコラーゲンを増加させた。
これらのデータは、超低周波磁界ばく露によるコラーゲン合成はp38MAPK経路の参加によって実施されること、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ経路がコラーゲン合成抑制する役割を担っているかも知れないこと、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ経路の抑制ばく露によるコラーゲン合成を加速させるかも知れないこと、を示唆している。

研究の種別:

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