研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[ELF磁界ばく露はマウスのマクロファージにおける酸化還元に関するタンパク質発現を変調させる] med./bio.

Exposure to ELF magnetic fields modulate redox related protein expression in mouse macrophages.

掲載誌: Toxicol Lett 2010; 192 (3): 330-336

この研究は、超低周波(ELF)磁界MF)と細胞との相互作用により、さまざまな細胞生理学的プロセスの変化が引き起こされるか否かを調べた。実験には、マウスマクロファージを用い、50 Hz、1.0 mT のMFばく露を行った。その結果、MFばく露により、活性酸素種ROS)の産生増加などの免疫細胞活性化が起こり、酸化還元調節プロセスに作用する重要なタンパク質発現レベルが調節されることが示された;MFの短期ばく露(2時間以下)は、クラスリン、アダプチン、PI3-キナーゼ、プロテインキナーゼB(PKB)、およびPP2Aのわずかで一時的な減少を引き起こすが、それより長いばく露の場合、そのような変化は生じなかった;NAD(P)Hオキシダーゼサブユニットgp91phoxのレベルは、対照との比較で見て、増加したレベルと正常のレベルの間で振動した;ストレスタンパク質Hsp70およびHsp110は、特定の時点でレベル上昇を示したが、全般的には上昇しなかった;タンパク質レベルに対するMFの影響は、12-O-テトラデカノリポボール-13-アセテート(TPA)またはLPSにより誘導される影響とは異なるが、これらは3つともROS放出の増加を引き起こす;このことは、ELFMFがこれらの化学物質以外の他の細胞構成要素と相互作用することを示唆する、と報告している。

研究目的(著者による)

酸化還元恒常性及びエンドサイトーシスのプロセスに関与するタンパク質のレベルに対する磁界の影響を調べること。更に、マクロファージにおいて重要な細胞機能を変調させる特定の相互作用シグナル伝達経路の成分(ホスホイノシチド-3-キナーゼ、プロテインキナーゼB、及びプロテインホスファターゼ)、ならびにストレスタンパク質Hsp70及びHsp10を調査した。

詳細情報

NAD(P)H-オキシダーゼのような酵素は、マクロファージでのフリーラジカルROS)の主な産出に介在する。著者らは、NADH-オキシダーゼの活性化が食細胞マクロファージ等)において重要な役割を担っていて、磁界によるフリーラジカル産出はこれのせいであると仮定している。

LPSリポ多糖類)及びTPA(テトラデカノイルホルボールアセテート)を陽性対照に用いた。LPSは、分化したマクロファージとその一酸化窒素産出に対する磁界の影響力を調べるために用いた。これは、LPSが一酸化窒素合成を活性化させるためである。TPAはNADPH-オキシダーゼを直接活性化し、ROS産出を刺激することが知られている。熱処理した細胞(42℃)も調査した。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
ばく露時間: up to 24 hr

General information

cells were treated in the following groups: i) EMF exposure ii) 1 µg/ml LPS added iii) 1 µM TPA added

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
偏波
  • linear
ばく露時間 up to 24 hr
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 culture plates placed in the center of the coils; coils inside a humidified incubator
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 1 mT - 測定値 - -
電界強度 0.64 mV/m maximum 計算値 - -
電流密度 0.96 mA/m² maximum 計算値 - -

Reference articles

  • Simko M et al. (2001): [マウスのマクロファージにおける食作用とフリーラジカル産出の50Hz電磁界による刺激]

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露中
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

このデータは、マウスのマクロファージの50Hz磁界(1mT)ばく露免疫細胞の活性化につながるという証拠を示している。活性酸素種の産出が増加したが、これはgp91phoxのレベルにおける(増加したレベルと通常レベル間の)顕著な振動(即ち、NAD(P)Hオキシダーゼの変調)によって説明できるかも知れない。これは、LPS/TPAがROS形成を生じる方法とは異なる。クラスリンとアダプチンのレベルの変化によって示されているように、活性酸素種の放出は、食細胞に関連する作用の活性につながった。ホスホイノシチド-3-キナーゼ、プロテインキナーゼB、プロテインホスファターゼ発現レベルの変調は、これらのシグナル伝達経路の主な活性化ではなく、その関与を示している。磁界ばく露は短期ばく露(2時間以下)後のクラスリン、アダプチン、ホスホイノシチド-3-キナーゼ、プロテインキナーゼB、プロテインホスファターゼ2Aの僅かな一過性の減少を生じたが、より長いばく露には影響はなかった。

Hsp70及びHsp10のタンパク質発現は、一般的ではなく、特定の時点でのレベル上昇を示した。

タンパク質レベルに対する磁界ばく露の影響は、TPAまたはLPSによって惹起される影響とは異なるが、3つの因子はいずれも、活性酸素種の放出の増加を生じた。このことは、超低周波磁界はこれらの化学物質以外の細胞成分と相互作用することを示唆しているが、誘導されたシグナル伝達経路は少なくとも部分的には収束した。

研究の種別:

研究助成

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