研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[CSC12筋細胞における超低周波電磁界による酸化還元状態及びカルシウム処理の変調:リアルタイムの単細胞アプローチ] med./bio.

Modulation of redox status and calcium handling by extremely low frequency electromagnetic fields in C2C12 muscle cells: A real-time, single-cell approach

掲載誌: Free Radic Biol Med 2010; 48 (4): 579-589

この研究は、骨格筋表現型細胞モデルとしてC2C12細胞を用いて、筋細胞分化と機能に対する超低周波電磁界(ELF-EMF)の短期ばく露の影響を、単一細胞アプローチにて調べた。影響は、酸化ストレスカルシウム(Ca2+)動態のマーカに着目して評価した。その結果、ELF-EMFは、筋芽細胞および筋管において活性酸素種産生を誘発し、同時にミトコンドリア膜電位を低下させることが示された;またELF-EMFは、細胞の解毒システムを活性化し、カタラーゼグルタチオンペルオキシダーゼの活性を高めることが示された;細胞内Ca2+ホメオスタシスを変化させ、筋管の自発的活動を増加させ、細胞内貯蔵Ca2+チャネルの脱分極剤(KCl)またはアゴニスト(カフェイン)に対する細胞の反応性を高めることが示された、と報告している。

研究目的(著者による)

細胞アプローチを適用して、筋細胞分化及び細胞機能に対する超低周波電磁界(50Hz、0.1及び1mT)への短期ばく露(30分間)の影響を調べた(酸化ストレス及びカルシウム処理のマーカーが焦点)。

詳細情報

細胞内Ca2+の変動が、原形質膜電位活性化カルシウムチャネルを通じた細胞外Ca2+流、あるいは、リアノジン感受性チャネルを通じた小胞体筋小胞体、及び/またはミトコンドリアからの細胞内Ca2+放出
に依存するかどうかを判定するため、著者らは、塩化カリウム脱分極剤)またはカフェイン(リアノジン感受性カルシウムチャネルの作動薬)の存在下で、C2C12細胞に対する超低周波電磁界の影響を評価した。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
ばく露時間: continuous for up to 30 min
single cell approach
ばく露2: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 5 min or 30 min
larger cell samples
ばく露3: 50 Hz
ばく露時間: intermittent for 30 min
control for ROS production experiments (field 1)

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
ばく露時間 continuous for up to 30 min
Additional information single cell approach
Additional information horizontal polarization
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 Helmholtz coils with a radius of 445 mm and a distance of 400 mm mounted perpendicular to the ground, located in the working zone of a confocal microscope
Additional information this setup was used for the examination of: i) ROS level ii) membrane potential iii) Ca2+ signaling
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 0.1 mT - - - -
磁束密度 1 mT - - - -

ばく露2

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
ばく露時間 continuous for 5 min or 30 min
Additional information larger cell samples
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 340 mm long horizontal cylindrical solenoid with a diameter of 113 mm
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 0.1 mT - - - -
磁束密度 1 mT - - - -

ばく露3

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
ばく露時間 intermittent for 30 min
Additional information control for ROS production experiments (field 1)
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • E1と同じ装置
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 1 mT - - - -

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露前
  • ばく露中
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

このデータは以下のことを明らかにした。超低周波電磁界は、1) 筋芽細胞及び筋管での活性酸素種産出を誘導し、同時にミトコンドリア膜電位を低下させる;2) 細胞の解毒系を活性化し、カタラーゼ及びグルタチオンペルオキシダーゼ酵素活性を高める;3) 細胞内Ca2+恒常性を変化させ、筋管の自発的活動を高め、カルシウムチャネル脱分極剤(塩化カリウム)または作動薬(カフェイン)に対する細胞の応答性を強める。

著者らは、このデータは、超低周波電磁界ばく露細胞の酸化還元状態の改変(細胞内Ca2+のレベルを高め、C2C12細胞の代謝活性を変調させ得る)とのつながりがあるかも知れないということを支持するものである、と結論付けている。

研究の種別:

研究助成

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