研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[イン・ビトロでのヒトの妊娠初期の絨毛栄養膜におけるホルモン分泌及びアポトーシス関連遺伝子発現に対する50Hz磁界ばく露の影響] med./bio.

Effects of 50-Hz magnetic field exposure on hormone secretion and apoptosis-related gene expression in human first trimester villous trophoblasts in vitro

掲載誌: Bioelectromagnetics 2010; 31 (7): 566-572

この研究は、超低周波磁界(ELF-MF)へのばく露生殖に及ぼす影響の考えられるメカニズムを調べるために、妊娠8 - 10週の第1トリメスターのヒト絨毛絨毛由来の栄養膜を単離、培養した培養物を用いて、インビトロ実験を行った。50 Hz MFのばく露は、磁束密度は0.2または0.4 mT、ばく露時間は6 、12、24、48、72 時間とした。培地中のヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)とプロゲステロン電気化学発光免疫測定法で測定した。栄養膜におけるアポトーシス関連遺伝子bcl-2baxカスパーゼ-3、p53、fas)のmRNAレベルをリアルタイムRT-PCR法で分析した。その結果、栄養膜に0.2 mTのMFを72時間ばく露しても、これらの細胞からのhCGおよびプロゲステロンの分泌に影響は生じなかった;0.4 mT、48時間ばく露の場合も、これらのホルモンの分泌に有意な変化はなかった;しかし、0.4 mT、72時間ばく露の場合、栄養膜のhCGおよびプロゲステロン分泌が有意に阻害された;アポトーシス関連遺伝子発現分析では、0.4 mTのMFばく露が72時間以内であれば、各遺伝子発現パターンに対照群との有意差がなかった;総括すると、MFへの長めの(72時間)のばく露は、ヒト第1トリメスター絨毛栄養膜によるhCGおよびプロゲステロンの分泌を阻害する可能性があるが、その効果は栄養膜アポトーシスとは関係がない可能性があることが示唆された、と報告している。

研究目的(著者による)

悪い妊娠結果に関連する超低周波についての可能性のあるメカニズムを調べるため、培養したヒトの妊娠初期の絨毛栄養膜におけるヒト絨毛性腺刺激ホルモン及びプロゲステロンの分泌、ならびにアポトーシス関連遺伝子発現に対する、50Hz磁界ばく露の影響をイン・ビトロで調査した。

詳細情報

栄養膜はヒト絨毛性腺刺激ホルモン及びプロゲステロンを分泌する。栄養膜の機能障害または過剰アポトーシスは通常、自然流産につながる。

妊娠8-10週目に妊娠中絶を選択した健康な非喫煙者の妊婦から、人工流産の直後に胎盤を取得した。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 6 hr, 12 hr, 24 hr, 48 hr or 72 hr

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
ばく露時間 continuous for 6 hr, 12 hr, 24 hr, 48 hr or 72 hr
Additional information vertical field
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 three groups of 36 cm x 36 cm square copper coils placed in an iron metal container inside an incubator; coils consisting of 168 turns (upper), 60 turns (middle) and 168 turns (lower), spaced 8 cm from each other; 10 cm x 10 cm x 10 cm exposure aerea inside the coil system where cultures were placed
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 0.2 mT - 測定値 - -
磁束密度 0.4 mT - 測定値 - -

Reference articles

  • Ke XQ et al. (2008): [50Hz磁界はEGF受容体のクラスタリングを生じ、RASを活性化させる]

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

データは、栄養膜の0.2mT磁界への72時間までのばく露は、ヒト絨毛性腺刺激ホルモン及びプロゲステロンの分泌に影響しないことを示した。栄養膜を0.4mT磁界に48時間までばく露した場合にも、これらのホルモン分泌に有意な変化はなかった。但し、磁界は0.4mTで72時間ばく露後、栄養膜のヒト絨毛性腺刺激ホルモン及びプロゲステロンの分泌を有意に抑制した。

アポトーシス関連遺伝子発現についての結果は、0.4mTで72時間以内のばく露では、それぞれの遺伝子発現パターンについて、磁界ばく露と対照で有意差はないことを示した。

著者らは、より長い(72時間)磁界ばく露は、ヒトの妊娠初期の絨毛栄養膜によるヒト絨毛性腺刺激ホルモン及びプロゲステロンの分泌を抑制し得るが、その影響は栄養膜アポトーシスとは関連していないかも知れない、と結論付けている。

研究の種別:

研究助成

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