研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[1970-2009年におけるスウェーデンおよび北欧の成人での悪性耳下腺腫瘍の発生率トレンド] epidem.

Incidence trends of malignant parotid gland tumors in Swedish and nordic adults 1970 to 2009

掲載誌: Epidemiology 2012; 23 (5): 766-767

この研究は、スウェーデンおよび北欧諸国における悪性耳下腺腫瘍およびすべての悪性唾液腺腫瘍発生率傾向を報告したレター論文である。スウェーデンがん登録およびNORDCANデータベースの公開データから1970年1月1日から2009年12月31日までに耳下腺腫瘍および唾液腺悪性腫瘍の一次診断を受けた20歳以上の患者を特定した。世界標準人口を用いて年齢標準化した年間発生率(10万人年あたりの症例数)を計算した。その結果、スウェーデンでは、1970年から2009年の間に20歳以上の成人唾液腺腫瘍が3604例確認され、そのうち2624例(73 %)が耳下腺悪性腫瘍であった;スウェーデンの唾液腺腫瘍発生率は、本調査期間の初期にわずかに減少し、その後、男女ともに安定していた;1970年から2009年の期間における北欧の全人口における唾液腺腫瘍の年齢標準化発生率(10万人年あたり)は、男性(4440例)で1.1、女性(4178例)で0.9となり、発生率の増加は観察されなかった;年変動率は、男性で-0.1 %(95 %CI = -0.4 - 0.2)、女性で-0.2 %(-0.5 - 0.1)であった;イスラエルおよび英国の論文では耳下腺腫瘍の登録発生率増加が報告されたが、それらの論文著者は、それは携帯電話の使用率増加を反映していると推測した。しかし、携帯電話使用が耳下腺腫瘍の顕著な危険因子であると仮定した場合、潜伏期間が15 - 20年を超えない限り、北欧諸国でもある程度の増加が見られるはずであるので、イスラエルおよび英国のデータには別の説明が必要であろう、と報告している。

研究の目的(著者による)

悪性の耳下腺腫瘍及び全ての悪性の唾液腺腫瘍発生率傾向を、スウェーデン及び北欧諸国において調査した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (標準化発生率比(SIR))

ばく露

調査対象集団

結論(著者による)

スウェーデンでは、1970-2009年の期間に、20歳以上の成人において唾液腺腫瘍の症例3604人が同定され、そのうち2624人(73%)が耳下腺の悪性新生物であった。スウェーデンにおける耳下腺腫瘍発生率は男女とも、当該調査期間の初期に僅かに減少し、その後は安定した(男性では1970年に0.9/100,000 人‐年、2009年に0.8/100,000人‐年; 女性では1970年及び2009年のどちらも0.7/100,000 人‐年)。
1970-2009年の期間における北欧の人口全体での唾液腺腫瘍の年齢で標準化した発生率は、男性で1.1/100,000(症例4440人)、女性で0.9/100,000(症例4178人)であった。発生率の上昇は認められなかった;年間変化率は男性で-0.1%、女性で-0.2%であった。

著者らは、仮に携帯電話使用が耳下腺腫瘍の顕著なリスク要因であったならば、潜伏期間が15-20年超だとしても、北欧諸国では幾らかの発生率の上昇が見られたはずである、と結論付けた。この結果は、イスラエル及び英国で認められた耳下腺腫瘍の登録された発生率の上昇について、他の説明を示唆している。

研究助成

関連論文