研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[携帯電話使用と上皮耳下腺の悪性腫瘍との相関] epidem.

Correlation between cellular phone use and epithelial parotid gland malignancies.

掲載誌: Int J Oral Maxillofac Surg 2011; 40 (9): 966-972

【目的】携帯電話使用と上皮耳下腺悪性腫瘍との関連を調べること。【方法】症例群は、1993年1月から2010年3月までに著者の病院で上皮耳下腺悪性腫瘍治療を受けた136名。対照群は、同期間内に唾液腺腫瘍ではなく口腔顎顔面外科に入院した2051名。ロジスティック分析を用いて、携帯電話使用と上皮耳下腺悪性腫瘍および粘膜表皮がんリスクとの関係を調べた。【結果】全体として、携帯電話使用頻度は上皮耳下腺悪性腫瘍有意な関連を示さなかった。女性、高齢、既婚、高収入、喫煙が上皮耳下腺悪性腫瘍、特に粘膜表皮がんリスク上昇と関連した。田園地域居住は上皮耳下腺悪性腫瘍リスク低下と関連した。携帯電話使用と上皮耳下腺悪性腫瘍との量反応関係の可能性が示唆された。【結論】携帯電話使用と上皮耳下腺悪性腫瘍および粘膜表皮がんとの関連について、大規模前向き調査による一層の研究が必要であることを著者は提唱する。

研究の目的(著者による)

携帯電話使用と上皮耳下腺の悪性腫瘍との関連を調査するため、中国において症例対照研究を実施した。

詳細情報

定常的ばく露は、診断前に6か月以上にわたって少なくとも週1回通話と定義した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (オッズ比(OR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 使用頻度:使用経験なし、または稀に使用
集団 2 使用頻度:定常的使用
参照集団 3 最初の使用から診断までの期間:使用経験なし、または稀に使用
集団 4 最初の使用から診断までの期間: 0.5 - 6年
集団 5 最初の使用から診断までの期間: 7 - 8年
集団 6 最初の使用から診断までの期間: 9 - 10年
集団 7 最初の使用から診断までの期間: > 10年
参照集団 8 計算上の携帯電話の使用期間:使用経験なし、または稀に使用
集団 9 計算上の携帯電話の使用期間: 0.5 - 6年
集団 10 計算上の携帯電話の使用期間: 7 - 8年
集団 11 計算上の携帯電話の使用期間: 9 - 10年
集団 12 計算上の携帯電話の使用期間: > 10年
参照集団 13 日常使用の平均:使用経験なし、または稀に使用
集団 14 日常使用の平均: ≤ 0.5時間
集団 15 日常使用の平均: 0.5 - 2.5時間
集団 16 日常使用の平均: > 2.5時間
参照集団 17 日常の最も長い1回の通話時間の平均:使用経験なし、または稀に使用
集団 18 日常の最も長い1回の通話時間の平均: ≤ 0.5時間
集団 19 日常の最も長い1回の通話時間の平均: 0.5 - 2.5時間
集団 20 日常の最も長い1回の通話時間の平均: > 2.5時間
参照集団 21 日常の通話件数の平均:使用経験なし、または稀に使用
集団 22 日常の通話件数の平均: ≤ 8
集団 23 日常の通話件数の平均: 9 - 10
集団 24 日常の通話件数の平均: > 10
参照集団 25 最初の使用からの通話件数:使用経験なし、または稀に使用
集団 26 最初の使用からの通話件数: ≤ 24,000
集団 27 最初の使用からの通話件数: 24,001 - 42000
集団 28 最初の使用からの通話件数: > 42000
参照集団 29 最初の使用からの通話時間:使用経験なし、または稀に使用
集団 30 最初の使用からの通話時間: ≤ 1350時間
集団 31 最初の使用からの通話時間: 1351 - 4320時間
集団 32 最初の使用からの通話時間: > 4320時間
参照集団 33 携帯電話を好んで使う側:使用経験なし、または稀に使用
集団 34 携帯電話を好んで使う側:同側
集団 35 携帯電話を好んで使う側:反対側
集団 36 携帯電話を好んで使う側:同側及び反対側

調査対象集団

症例集団

対照集団

調査規模

症例 対照
適格者 221 2,643
参加者 136 2,051
参加率 62 % 78 %
統計学的分析方法:

結論(著者による)

全体として(参照グループ1及び2の間で)、携帯電話使用の頻度は耳下腺の悪性腫瘍と有意に関連していなかった。但し、単変量解析のサブグループ(例:最初の使用からの期間が > 10年、平均的な日常使用が > 2.5 時間、計算した使用期間が > 10年)、及び多変量解析のサブグループ(例:最初の使用からの通話件数が > 42000(OR 15.4、CI 13.3-17.4)、計算した使用期間が9-10年(OR 7.7、CI 6.2-9.2)、平均的な日常使用が > 2.5時間(OR 6.0、CI 1.5-24.5))に、統計的に有意な関連が認められた。
女性、高齢、婚姻状態、より高い教育、より高い月収、喫煙が、上皮耳下腺悪性腫瘍、特に粘膜表皮がんリスク上昇と関連していた。
同側での携帯電話使用と上皮耳下腺悪性腫瘍との統計的に有意な関連は認められず、このことは携帯電話使用と耳下腺悪性腫瘍について決定的な結論は下せないことを示している。
著者らは、この結果は携帯電話使用と上皮耳下腺悪性腫瘍との間にあるかも知れない量‐反応関係を示唆している、と結論付けている。彼らは、バイアスを減らし、この結果を確認するため、携帯電話使用と上皮耳下腺悪性腫瘍との関連を、大規模の前向き研究で更に調査する必要がある、と示唆している。

研究の限界(著者による)

選択バイアス及び想起バイアスを排除できない。定常的使用は診断前の6か月以上にわたって少なくとも週1回通話と定義されたが、そのような短期間のばく露によって上皮耳下腺悪性腫瘍が生じることはなさそうであり、これが誤分類バイアスにつながったかもしれない。

研究助成

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