研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[キプロスにおける軍用アンテナに対する2つの自治体の健康反応] epidem.

Health response of two communities to military antennae in Cyprus

掲載誌: Occup Environ Med 2007; 64 (6): 402-408

【目的】 本研究は、キプロスのアクロチリにおける、軍事用アンテナからの無線周波数(7-30MHz)の高電力送信により引き起こされる過去および将来の健康影響に関する懸念を調べることである。【方法】三つの村(二つはばく露あり、一つはばく露なし)での横断的研究であり、無線周波数(RF)の長期および短期測定を行った。健康データは質問紙を用いて収集した。人口統計学的因子、特定の病気、一般的健康(SF36安寧質問紙)、生殖歴、子供の病気、リスク認知、死亡に関する情報が含まれた。分析は、SPSS v11.5を利用し、ノンパラメトリックデータのクロス集計と有意性の検定を用いて行った。結果として表れた主要な健康影響についてはロジスティック回帰分析を行った。【結果】"ばく露あり"の二つの村内の電磁界強度は、17.6MHzの軍事的送信機からは最大0.30Vm-1、携帯電話周波数を主とした不特定の発生源からは1.4Vm-1までであった。対照の村での、それぞれに対応した値は<0.01 Vm-1であった。偏頭痛頭痛めまいの報告が、対照の村と比較して、有意に高かった。ばく露の村の住民は、SF36の8領域全てにおいて、自身の健康により強い否定的見解を示した。認知リスクのレベルも、特に騒音と電磁界”汚染“に対して高かった。三つの村全てが、英国の住民より、リスク認知で高い値を報告した。出産異常、産婦人科受診歴の差異の証拠はなかった。がんの事例数は少なく、差異は示せなかった。【結論】大電力送信機へこのように接近(1-3km)した場合においてさえ、主要なRF電磁界発生源は携帯電話と国営放送システムであった。がん先天性欠損、産科的問題にはいかなる増加もなかった。リスク認知が高くなり、偏頭痛頭痛めまいにかなりの過剰があり、それらはRFばく露と勾配を共有しているように見えた。著者らはこの関連を報告するが、これはRFの影響ではなく、アンテナが見えることまたは航空機騒音の影響である可能性があることを示唆する。

研究の目的(著者による)

キプロスのアクロティリにある軍用アンテナシステムからの高周波電波によって生じる健康影響を評価するため、健康調査を実施した。

詳細情報

電磁界ばく露及び健康情報についてのデータは以下の3地点で収集した:アクロティリ及びアサマトスの「ばく露された」自治体(軍用アンテナまで1-3㎞の距離)、及びパノ・キヴィデスの「ばく露されなかった」村(距離15㎞)。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 パノ・キヴィデス:< 0.01 V/m
集団 2 アクロティリ:広帯域屋外界強度の平均値(全発生源、軍用、民間及び放送):0.57V/m;軍用送信(17.6MHz):0.11V/m
集団 3 アサマトス:広帯域屋外界強度の平均値(全発生源、軍用、民間及び放送):0.46V/m;軍用送信(17.6MHz):0.04V/m

調査対象集団

調査規模

タイプ
適格者 2,150
参加率 87 %
その他:

アクロティリの住民800人、アサマトスの住民350人、パノ・キヴィデスの住民1000人

統計学的分析方法:

結論(著者による)

対照の村と比較して、ばく露された自治体の住民における偏頭痛(アクロティリについての未調整OR:2.7;CI 1.82-4.10)、頭痛(アクロティリについての未調整OR:3.7;CI 2.71-5.00)、目まい(未調整OR:2.7)についての報告に有意差があった。ばく露された住民におけるがん発生率小児疾患または負の生殖影響の増加の証拠はなかった。彼らは自身の健康について、SF-36健康調査の8項目全てのドメインで、悪い見方をより強く示した。彼らは、特に騒音と電磁スモッグに対する認知上のリスクのレベルもより高かった。死亡率へのあるかも知れない影響は、不確かなデータのために決定できなかった。

著者らは、本研究の結果は電磁界発生源への近接度が安寧と健康に影響を及ぼすという可能性を排除しない、と結論付けた。但し、強力な軍用アンテナ送信への近傍(1-3kmの距離)でさえも、測定された界レベルは因果関係を何ら示唆しておらず、無線周波界の支配的な発生源は携帯電話基地局及び国内放送システムであった。健康影響についての説明の一部は、強められたリスク認知かも知れない。軍用アンテナへの住民の近接度は、航空機の騒音を含む一般的な汚染にも関連し得る。

研究助成

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