研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[テレビおよびラジオ放送の送信機から放射される無線周波電磁界との関連で見た小児白血病:症例対照研究の結果] epidem.

[Childhood leukemia in relation to radiofrequency electromagnetic fields emitted from television and radio broadcast transmitters: results of a case-control study]

掲載誌: Umweltmed Forsch Prax 2009; 14 (2): 79-90

この研究は、放送局から放射される無線周波電磁界RF-EMF)と小児白血病の発生リスクとの関連を調べるために西ドイツで実施された症例対照研究である。調査地域には、24のラジオおよびテレビ送信機の近くの自治体が含まれた。ドイツの小児がん登録に登録されている症例1,959人(0 - 14歳、診断1984 – 2003年)、症例1に対し対照3で、年齢、性別、送信機のエリアを一致させて人口登録から無作為抽出された対照5,848人を分析した。RF-EMFばく露を、電界強度予測プログラムを使用して計算した。統計学的分析には条件付きロジスティック回帰を用いた。その結果、すべてのRF-EMFを考慮した場合、小児白血病オッズ比は0.86(95 %信頼区間0.67 - 1.11)であった、と報告している。

研究の目的(著者による)

TV及びラジオ放送送信装置の近傍での小児白血病無線周波電磁界との関連を調査するため、ドイツにおいて症例対照研究を実施した(Merzenich他、2008 も参照)。

詳細情報

実効放射電力が少なくとも200kWのAM送信装置、及び、実効放射電力の合計が少なくとも200kW(FM)または500kW(TV)のFM/TV送信装置の近傍の自治体を、調査地域として選択した。送信装置の運転特性に基づく界強度予測プログラムを用いて個人のばく露を計算した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (オッズ比(OR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 AM及びFM/TV送信装置へのばく露: 0 - < 90 %分位: 0.004 - < 0.504 V/m
集団 2 AM及びFM/TV送信装置へのばく露: 90 - < 95 %分位: 0.504 - < 0.701 V/m
集団 3 AM及びFM/TV送信装置へのばく露: 95 - ≤ 100 %分位: 0.701 - 7.742 V/m
参照集団 4 AM送信装置へのばく露: 0 - < 90 %分位: 0.000 - < 0.488 V/m
集団 5 AM送信装置へのばく露: 90 - < 95 %分位: 0.488 - < 0.683 V/m
集団 6 AM送信装置へのばく露: 95 - ≤ 100 %分位: 0.683 - 7.741 V/m
参照集団 7 FM/TV送信装置へのばく露: 0 - < 90 %分位: 0.001 - < 0.164 V/m
集団 8 FM/TV送信装置へのばく露: 90 - < 95 %分位: 0.164 - < 0.198 V/m
集団 9 FM/TV送信装置へのばく露: 95 - ≤ 100 %分位: 0.198 - 0.815 V/m
参照集団 10 1983-1991年のAM及びFM/TV送信装置へのばく露: 0 - < 90 %分位: 0.004 - < 0.546 V/m
集団 11 1983-1991年のAM及びFM/TV送信装置へのばく露: 90 - < 95 %分位: 0.546 - < 0.779 V/m
集団 12 1983-1991年のAM及びFM/TV送信装置へのばく露: 95 - ≤ 100 %分位: 0.779 - < 7.022 V/m
参照集団 13 1992-2002年のAM及びFM/TV送信装置へのばく露: 0 - < 90 %分位: 0.005 - < 0.486 V/m
集団 14 1992-2002年のAM及びFM/TV送信装置へのばく露: 90 - < 95 %分位: 0.468 - < 0.653 V/m
集団 15 1992-2002年のAM及びFM/TV送信装置へのばく露: 95 - ≤ 100%分位: 0.653 - < 7.742 V/m
参照集団 16 AM及びFM/TV送信装置へのばく露、誕生から診断まで転居しなかった子ども: 0 - < 90 %分位: 0.004 - < 0.553 V/m
集団 17 AM及びFM/TV送信装置へのばく露、誕生から診断まで転居しなかった子ども: 90 - < 95 %分位: 0.553 - < 0.788 V/m
集団 18 AM及びFM/TV送信装置へのばく露、誕生から診断まで転居しなかった子ども: 95 - ≤ 100 %分位: 0.788 - < 7.742 V/m
参照集団 19 AM及びFM/TV送信装置へのばく露、1-4歳の子ども: 0 - < 90 %分位: 0.004 - < 0.520 V/m
集団 20 AM及びFM/TV送信装置へのばく露、1-4歳の子ども: 90 - < 95 %分位:0.520 - < 0.751 V/m
集団 21 AM及びFM/TV送信装置へのばく露、1-4歳の子ども: 95 - ≤ 100 %分位: 0.751 - 7.742 V/m
集団 22 AM及びFM/TV送信装置までの距離: 0 - < 2 km
集団 23 AM及びFM/TV送信装置までの距離: 2 - < 6 km
集団 24 AM及びFM/TV送信装置までの距離: 6 - < 10 km
参照集団 25 AM及びFM/TV送信装置までの距離: 10 - < 15 km
集団 26 AM及びFM/TV送信装置までの距離: ≥ 15 km
集団 27 AMV送信装置までの距離: 0 - < 2 km
集団 28 AM送信装置までの距離: 2 - < 6 km
集団 29 AM送信装置までの距離: 6 - < 10 km
参照集団 30 AM送信装置までの距離: 10 - < 15 km
集団 31 AM送信装置までの距離: ≥ 15 km
集団 32 FM/TV送信装置までの距離: 0 - < 2 km
集団 33 FM/TV送信装置までの距離: 2 - < 6 km
集団 34 FM/TV送信装置までの距離: 6 - < 10 km
参照集団 35 FM/TV送信装置までの距離: 10 - < 15 km
集団 36 FM/TV送信装置までの距離: ≥ 15 km

調査対象集団

症例集団

対照集団

統計学的分析方法:

結論(著者による)

本研究では、TV及びラジオ放送送信装置の近傍での小児白血病無線周波電磁界との関連の証拠は示されなかった。AM及びFM/TV送信装置の個別分析、1983-1992年の期間についての分析では、リスク上昇は認められなかった。

研究助成

関連論文