研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[イタリアのローマにある高出力無線局の近くでの成人及び小児の白血病] epidem.

Adult and childhood leukemia near a high-power radio station in Rome, Italy.

掲載誌: Am J Epidemiol 2002; 155 (12): 1096-1103

【目的】バチカンラジオ局周辺(10km圏内。1991年で約5万人居住)での、成人白血病死亡数(14歳以上。1987-1998で40例)と小児白血病発生数(1987-1999で8例)を評価すること。【方法】バチカンラジオ局には種々のアンテナが設置されている。距離など様々な測定条件での電界強度の測定例が表1に示されているが、系統的なばく露評価はしてない。がん統計などから得られた症例について、放送局からの距離による5区域を用いて分析した。国勢調査区域が2つの距離区域に跨る場合は、国勢調査区域の中心が含まれる距離区域に割りつけ、ローマ市のデータを基準とした各距離区域の標準化発生率比および死亡率比(SIRおよびSMR)を計算した。【結果】表2に示すように、成人白血病死亡に関しては、男女別および総合において過剰リスクはなかったが、例外として2km以内区域の男性でのSMRが有意に大きかった。また、距離によるリスク低下は男性においてのみ有意であった。小児白血病発生に関しては、0-2km、2-4km、4-6kmにおけるSIRは6.1、2.3、1.9であり、6km以遠では発生はなかった。6km圏内全体でのSIRは2.2(95%CI:1.0-4.1)であった。【結論】本研究の限界は、症例数の少なさとばく露評価の欠如である。本研究は、高出力放送設備周辺の住民における白血病過剰について証拠を付け加えたことになるものの、いかなる因果関係の示唆も導くことはできない。ラジオ周波数への居住地ばく露白血病発生に与える影響の可能性について明らかにするためには、十分な科学的知識と新しい疫学研究が必要である。

研究の目的(著者による)

ヴァチカン放送の無線局の近くの人口における成人白血病死亡リスク及び小児白血病の発症率を調査するため、イタリアにおいて生態学的研究を実施した。

詳細情報

ヴァチカン放送の無線局は1957年に設置され、送信電力が5-600kWの範囲、周波数が異なる回転式アンテナ3基、固定アンテナ28基で構成され、これには周波数4005-21850kHzの短波用トランスミッタ9基、周波数527-1611kHzの中波用トランスミッタ3基が含まれる。

研究エリアはラジオ局からの距離に応じて5つのバンドに分けられた。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (標準化発生率比(SIR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
集団 1 送信装置までの距離:0 - 2 km
集団 2 送信装置までの距離:2 - 4 km
集団 3 送信装置までの距離:4 - 6 km
集団 4 送信装置までの距離:6 - 8 km
集団 5 送信装置までの距離:8 - 10 km

調査対象集団

調査規模

タイプ
合計 49,656
その他:

9723人の子どもを含む

統計学的分析方法:

結論(著者による)

ヴァチカン放送の無線局から10kmの距離内で合計40人の白血病死亡(男性21人、女性19人)が観察された。無線局から2km以内での成人男性の死亡を除いて、異なるバンドでの有意な過剰死亡はなかった。
10km区域で合計8人の小児白血病症例が観察され、全て無線局から6km以内であった。小児白血病リスクは6kmまでの区域で期待値よりも高かった(SIR 2.2、CI 1.0-1.4)。

本研究は、高出力送信施設の近傍に住む人口における白血病の過剰二ついての証拠を追加するものであるが、因果的な意味合いは導けない。

研究の限界(著者による)

本研究は、症例の数が少なく、ばく露データが欠如しているので、限界がある。

研究助成

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