研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[携帯電話基地局と早期小児がん:症例対照研究] epidem.

Mobile phone base stations and early childhood cancers: case-control study

掲載誌: BMJ 2010; 340: c3077

この研究は、妊娠中の母親のマクロセル携帯電話基地局(マスト)からの無線周波ばく露またはその住居と基地局の距離に関連する初期小児がんリスクについての症例対照研究である。1999年から2001年の英国がん登録から0歳児から4歳児の症例1,397人、出生登録から性別、誕生日をマッチした対照5,588人(1症例に4対照)について、脳腫瘍中枢神経系腫瘍白血病、非ホジキンスリンパ腫、全てのがんの発症率を、教育レベル、社会経済的困難度、人口密度、人口混合を調整して分析した。マクロセル基地局から登録住所までの距離は1996年から2001年までの基地局アンテナ76,890本の国内データベースに基づき算出した。その結果、平均距離・700メートル以内の全ての基地局についての出力合計値および電力密度のモデル計算値は症例群と対照群で同等であった;出生地住所でモデル計算した電力密度については、最低ばく露カテゴリーに比較した全がんの調整オッズ比は、中間カテゴリーで1.01 (95%信頼区間 0.87-1.18)、最高カテゴリーで1.02(0.88 から1.20)であった(傾向性の検定のp値=0.79);脳腫瘍及び中枢神経系腫瘍ではそれぞれ0.97(0.69-1.37)と0.76(0.51-1.12)、白血病及び非ホジキンスリンパ腫では1.16(0.90-1.48)及び1.03(0.79-1.34)であった、と報告し、関連性は見られなかったと結論している。

研究の目的(著者による)

携帯電話基地局からの無線周波への妊娠中の母親のばく露に関連した早期小児がんリスクを調査するため、英国において症例対照研究を実施した。

詳細情報

4つの全国規模の携帯電話事業者が全ての基地局(GSM900及び1800)について、以下を含むデータを提供した:サイト識別子、座標(精度約10m)、基地局当たりのアンテナの数、アンテナの向き(方位角)、種類(セクター型、無指向性)地上高さ、総チルト角(電気的及び機械的)、横方向及び縦方向のビーム幅(角度)、総出力電力(実効等方放射電力)、周波数(MHz)。これらのデータに基づき、距離、総出力電力、モデル化した電力密度の3つのばく露推定を計算した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (オッズ比(OR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 最も近くの携帯電話基地局からの距離: ≥ 1071.8 m
集団 2 最も近くの携帯電話基地局からの距離: 612.1 - 1071.7 m
集団 3 最も近くの携帯電話基地局からの距離: 0 - 612.0 m
参照集団 4 出力電力の合計: 0 kW
集団 5 出力電力の合計: 0.001-4.742 kW
集団 6 出力電力の合計: ≥ 4.742 kW
参照集団 7 モデル化した電力密度: 0 - 0.002256 mW/m²
集団 8 モデル化した電力密度: 0.002257 - 0.016996 mW/m²
集団 9 モデル化した電力密度: ≥ 0.016997 mW/m²

調査対象集団

症例集団

対照集団

調査規模

症例 対照
適格者 1,926 6,222
評価可能 1,397 5,588
その他:

脳のがんの子ども251人、白血病及び非ホジキンリンパ腫の子ども527人

統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

早期小児がんと、携帯電話基地局からの無線周波への妊娠中の母親のばく露の推定値との関連は認められなかった。

研究助成

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