研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[高圧架空電力線の近くでの成人のがん] epidem.

Adult cancers near high-voltage overhead power lines.

掲載誌: Epidemiology 2013; 24 (2): 184-190

この研究は、イングランドおよびウェールズの全国がん登録のデータ(1974-2008)を用い、高圧架空電力線からの距離およびELF磁界成人がんリスクとの関連を調べた症例対照研究である。研究に含めた症例は、白血病7823人、脳/中枢神経系腫瘍6781人、悪性メラノーマ9153人、女性の乳がん29,202人。対照79507人は、症例の4種類以外のがん患者から、暦年と地域についての度数マッチングにより得た(症例1人に対する対照は、女性乳がんに対しては1人、それ以外のがんでは3人)。なお、症例対照とも15-74才で、高圧架空電力線から1000 m以内の居住者に限定した。その結果、電力線からの距離による過剰リスクの明確なパターンは見られなかった;交絡因子(年齢、性別[乳がんを除く]、地域の貧富スコア、都市化度)を調整した分析では、距離600-1000 mに対する最接近距離0-49 mのオッズ比は、悪性メラノーマの0.82(95%CI = 0.61-1.11; 66症例)から脳/中枢神経系腫瘍の1.22(0.88-1.69)の範囲であった;4種類のがんにおいて、意味のある過剰リスクおよび磁界強度によるリスク傾向性は見られなかった;交絡因子を調整した分析では、<100 nTに対する推定磁界最高レベル≧1000 nT のオッズ比は、悪性メラノーマの0.68(0.39-1.17)から女性乳がん腫瘍の1.08(0.77-1.51)の範囲であった、と報告している。

研究の目的(著者による)

高圧架空電力線からの距離及び超低周波磁界成人がんリスクとの関連を調査するため、イングランド及びウェールズにおける1974-2008年の国家がん登録データを用いて、英国において症例対照研究を実施した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (オッズ比(OR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 住所から最も近くの電力線までの距離: 600-1000m
集団 2 住所から最も近くの電力線までの距離: 500-599m
集団 3 住所から最も近くの電力線までの距離: 400-499m
集団 4 住所から最も近くの電力線までの距離: 300-399m
集団 5 住所から最も近くの電力線までの距離: 200-299m
集団 6 住所から最も近くの電力線までの距離: 100-199m
集団 7 住所から最も近くの電力線までの距離: 50-99m
集団 8 住所から最も近くの電力線までの距離: 0-49m
参照集団 9 推定磁界: < 0.1 µT
集団 10 推定磁界: 0.1 - 0.199 µT
集団 11 推定磁界: 0.2 - 0.299 µT
集団 12 推定磁界: 0.3 - 0.399 µT
集団 13 推定磁界: 0.4 - 0.999 µT
集団 14 推定磁界: ≥ 1.0 µT

調査対象集団

症例集団

対照集団

調査規模

症例 対照
適格者 82,161 164,095
統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

全体として、白血病の症例7823人、脳/中枢神経系がんの症例6781人、悪性黒色腫の症例9153人、乳がんの症例58404人、ならbに対照79507人を本研究に含めた。
診断時の住所と1000m以内の電力線との距離と、成人がんの過剰リスクとの明確なパターンはなかった。600-1000mの距離と比較して、住所と近くの電力線との距離がより近い(0-49m)場合のオッズ比OR)は、悪性黒色腫についての0.82(CI 0.61-1.11)から、脳及び中枢神経系がんについての1.22(CI 0.88-1.69)の範囲であった。調査した4種類のがんについては、磁界強度に伴う有意な過剰リスクも、リスク傾向も認められなかった。最も高い推定磁界強度(≥ 1.0 µT)では、 < 0.1 µTと比較して、オッズ比悪性黒色腫について0.68(CI 0.39-1.17)から乳がんについての1.08(CI 0.77-1.51)の範囲であった。

著者らは、この結果は成人がんと高圧架空電力線の近傍での居住環境磁界との疫学的関連を支持していない、と結論付けている。

研究助成

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