研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[居住環境磁界と乳がんのリスク] epidem.

Residential magnetic fields and the risk of breast cancer

掲載誌: Am J Epidemiol 2002; 155 (5): 446-454

この研究は、米国ワシントン州の大シアトル圏において、20〜74歳の女性を対象に、居住環境60 Hz磁界ばく露乳がんリスク上昇との関連の有無を調査した人口ベース症例対照研究である。症例は、1992年11月から1995年3月の間に診断された(n = 813)。対照は、ランダムデジットダイアリングで無作為抽出され、5歳階級で症例と頻度マッチさせた(n = 793)。ばく露は、診断時の住宅での磁界測定値、診断前の10年間に居住したすべての住宅のワイヤコード、および家庭電化製品の使用に関する自己申告の3つを用いて推定された。オッズ比および95%信頼区間は、他の潜在的リスク因子を調整した条件付きロジスティック回帰分析法により推定した。その結果、夜間寝室での磁界レベル測定値、診断時の住宅のワイヤコード、診断前の5年間および10年間に居住したすべての住宅の重み付け合計ワイヤコード、またはベッド加温装置を含む一般家庭電化製品使用の申告のいずれとも、乳がんリスク上昇の関係はなかった;この研究で得られたデータは、居住環境磁界ばく露乳がんの発症リスク上昇と関連するという仮説を支持しない、と報告している。

研究の目的(著者による)

乳がんリスクが居住環境磁界へのばく露と関連しているかどうかを調査するため、米国において症例対照研究を実施した。

詳細情報

診断時の住宅での48時間測定、診断前の10年間に住んでいた全ての住宅の電線配置、及び家庭用電気器具の使用についての自己申告によって、最大磁界ばく露を評価した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (オッズ比(OR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 夜間の平均磁界:< 0.020 µT
集団 2 夜間の平均磁界:0.020 - 0.037 µT
集団 3 夜間の平均磁界:0.037 - 0.073 µT
集団 4 夜間の平均磁界:≥ 0.073 µT
参照集団 5 いずれかの測定値が≥ 0.2 µT:いいえ
集団 6 いずれかの測定値が≥ 0.2 µT:はい
参照集団 7 Wertheimer-Leeperスキーム、現在の住居:非常に低い電流配置(VLCC)
集団 8 Wertheimer-Leeperスキーム、現在の住居:地下
集団 9 Wertheimer-Leeperスキーム、現在の住居:一般に低い電流配置(OLCC)
集団 10 Wertheimer-Leeperスキーム、現在の住居:一般に高い電流配置(OHCC)
集団 11 Wertheimer-Leeperスキーム、現在の住居:非常に高い電流配置(VHCC)
参照集団 12 Wertheimer-Leeperスキーム、5年カテゴリー:非常に低い電流配置(VLCC)
集団 13 Wertheimer-Leeperスキーム、5年カテゴリー:地下
集団 14 Wertheimer-Leeperスキーム、5年カテゴリー:一般に低い電流配置(OLCC)
集団 15 Wertheimer-Leeperスキーム、5年カテゴリー:一般に高い電流配置(OHCC)
集団 16 Wertheimer-Leeperスキーム、5年カテゴリー:非常に高い電流配置(VHCC)
参照集団 17 Wertheimer-Leeperスキーム、10年カテゴリー:非常に低い電流配置(VLCC)
集団 18 Wertheimer-Leeperスキーム、10年カテゴリー:地下
集団 19 Wertheimer-Leeperスキーム、10年カテゴリー:一般に低い電流配置(OLCC)
集団 20 Wertheimer-Leeperスキーム、10年カテゴリー:一般に高い電流配置(OHCC)
集団 21 Wertheimer-Leeperスキーム、10年カテゴリー:非常に高い電流配置(VHCC)
参照集団 22 全ての家電製品、診断前の10年間:< 0.0062 T
集団 23 全ての家電製品、診断前の10年間:0.0062 - 0.0105 T
集団 24 全ての家電製品、診断前の10年間:0.0105 - 0.0171T
集団 25 全ての家電製品、診断前の10年間:≥ 0.0171 T
参照集団 26 ベッド加温装置、使用経験:なし
集団 27 ベッド加温装置、使用経験:あり
参照集団 28 ベッド加温装置の使用:0時間
集団 29 ベッド加温装置の使用:< 511時間
集団 30 ベッド加温装置の使用:511-1217時間
集団 31 ベッド加温装置の使用:1217-2149時間
参照集団 32 ベッド加温装置の使用:≥ 2149時間

調査対象集団

症例集団

対照集団

調査規模

症例 対照
適格者 1,039 1,053
参加者 813 793
参加率 78 % 75 %
統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

90%超の症例及び対照で、平均の夜間磁界レベルは0.16µTであった。
夜間の寝室の磁界の尺度、診断時の住宅のワイヤ・コード配置、あるいは診断前の10年間に住んでいた全ての住宅のワイヤ・コードの荷重サマリ尺度、及び、ベッド加温装置を含む家庭用電気器具の使用についての自己申告に関して、乳がんリスク上昇は認められなかった。
本研究の結果は、居住環境磁界へのばく露乳がん発症のリスク上昇と関連しているという仮説を支持していない。

研究助成

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