研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[HL60細胞での50Hz磁界によるCREB DNA結合活性化は細胞外および細胞内のCa 2+に依存するが、PKA、PKC、ERKまたはp38 MAPKには依存しない] med./bio.

CREB DNA binding activation by a 50-Hz magnetic field in HL60 cells is dependent on extra- and intracellular Ca2+ but not PKA, PKC, ERK, or p38 MAPK

掲載誌: Biochem Biophys Res Commun 2002; 296 (4): 1013-1018

この研究は、超低周波磁界(ELF MF)が遺伝子転写の変化を引き起こすか否かを、そのメカニズムの候補仮説に基づき調べた。具体的には、0.1mT 50 Hzの正弦波ELF MFばく露を与えたHL60細胞において、転写因子であるサイクリックAMP応答配列結合タンパク質CREB(cAMP-responsive element binding protein)のDNAとの結合挙動を、ゲルシフトアッセイを用いて測定した。その結果、正弦波ELF MFばく露は、CREBの結合を活性化した;その時間的経過は、10分間のMFばく露の場合、まず、ばく露直後に結合の形成が増加し、その1時間後にピークレベルに達し、ばく露の4時間後にベースラインレベルに回復した;30分、1および2時間のMFばく露においては、ばく露後に、MF誘導性の新規のATF2 / ATF2ホモダイマー形成が観察された;さまざまな阻害剤を利用した実験により、MF誘導によるCREBとDNAの結合増加には、細胞外および細胞内Ca(2+)の両方への依存性が見られたが、PKA、PKC、ERK、またはp38 MAPKへの依存性はないことが示された、と報告している。

研究目的(著者による)

ヒト細胞におけるCREB転写因子のDNA結合活性に対する、0.1mT、50Hzの超低周波正弦波磁界へのばく露の影響を調査すること。

詳細情報

CREB(サイクリックAMP応答エレメント結合タンパク質)は、細胞刺激に対する細胞応答を介在し、増殖または分化に関与する各種のシグナル伝達経路のターゲットの転写因子の一つである。CREBの活性化には複数のシグナル伝達経路が関与しているので、磁界誘発されたCREB結合活性に対する各種の阻害剤の影響も調査した(異なるシグナル伝達経路の阻害剤、例:PKA、PKC、ERK(細胞シグナル制御キナーゼ)、p38 MAPK(p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ))。更に、Ca2+キレート剤を用いて、細胞内及び細胞外Ca2+濃度の関連を調べた。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
ばく露時間: 10 min, 0.5, 1, 2, 4, and 12 hrs (sham exposure for 12 hrs)

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
ばく露時間 10 min, 0.5, 1, 2, 4, and 12 hrs (sham exposure for 12 hrs)
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
チャンバの詳細 The coils were placed in a mu-metal container.
ばく露装置の詳細 The magnetic field was very uniform (0.1%) at the center (10 x 10 x 10 cm³) of the coils where the cell cultures dishes were placed. Sham-exposed cells were handled in the same manner but without the magnetic field.
Additional information Three groups of square copper coils 36 cm x 36 cm with the upper, middle and lower coils having 104, 52 and 104 turns, respectively. They were spaced 18 cm from each other.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 0.1 mT unspecified 測定値 - -

Reference articles

  • Zhou J et al. (2002): [50Hz磁界にばく露されたHL60細胞のサイトカイン受容体の遺伝子発現]

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露中
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

磁界ばく露はCREB-DNA結合の時間依存性の活性化を生じた。CREB複合体形成は10分間の磁界ばく露の直後に増加し、1時間後にピークレベルに達し、ばく露の4時間後に基底レベルに戻った。
更に、磁界ばく露誘発されたCREB-DNA結合の増加は、細胞外及び細胞内のCa2+濃度に依存したが、PKA、PKC、ERK、またはp38 MAPKには依存しなかった。
これらの結果は、磁界ばく露がCa2+が関連する信号伝達経路を通じてCREB-DNA結合を活性化させることを示すものである。

研究の種別:

研究助成

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