この研究は、超低周波磁界(ELF MF)が遺伝子転写の変化を引き起こすか否かを、そのメカニズムの候補仮説に基づき調べた。具体的には、0.1mT 50 Hzの正弦波ELF MFばく露を与えたHL60細胞において、転写因子であるサイクリックAMP応答配列結合タンパク質CREB(cAMP-responsive element binding protein)のDNAとの結合挙動を、ゲルシフトアッセイを用いて測定した。その結果、正弦波ELF MFばく露は、CREBの結合を活性化した;その時間的経過は、10分間のMFばく露の場合、まず、ばく露直後に結合の形成が増加し、その1時間後にピークレベルに達し、ばく露の4時間後にベースラインレベルに回復した;30分、1および2時間のMFばく露においては、ばく露後に、MF誘導性の新規のATF2 / ATF2ホモダイマー形成が観察された;さまざまな阻害剤を利用した実験により、MF誘導によるCREBとDNAの結合増加には、細胞外および細胞内Ca(2+)の両方への依存性が見られたが、PKA、PKC、ERK、またはp38 MAPKへの依存性はないことが示された、と報告している。
CREB(サイクリックAMP応答エレメント結合タンパク質)は、細胞外刺激に対する細胞応答を介在し、増殖または分化に関与する各種のシグナル伝達経路のターゲットの転写因子の一つである。CREBの活性化には複数のシグナル伝達経路が関与しているので、磁界に誘発されたCREB結合活性に対する各種の阻害剤の影響も調査した(異なるシグナル伝達経路の阻害剤、例:PKA、PKC、ERK(細胞外シグナル制御キナーゼ)、p38 MAPK(p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ))。更に、Ca2+キレート剤を用いて、細胞内及び細胞外Ca2+濃度の関連を調べた。
ばく露 | パラメータ |
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ばく露1:
50 Hz
ばく露時間:
10 min, 0.5, 1, 2, 4, and 12 hrs (sham exposure for 12 hrs)
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周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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波形 |
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ばく露時間 | 10 min, 0.5, 1, 2, 4, and 12 hrs (sham exposure for 12 hrs) |
ばく露の発生源/構造 | |
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チャンバの詳細 | The coils were placed in a mu-metal container. |
ばく露装置の詳細 | The magnetic field was very uniform (0.1%) at the center (10 x 10 x 10 cm³) of the coils where the cell cultures dishes were placed. Sham-exposed cells were handled in the same manner but without the magnetic field. |
Additional information | Three groups of square copper coils 36 cm x 36 cm with the upper, middle and lower coils having 104, 52 and 104 turns, respectively. They were spaced 18 cm from each other. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 0.1 mT | unspecified | 測定値 | - | - |
磁界ばく露はCREB-DNA結合の時間依存性の活性化を生じた。CREB複合体形成は10分間の磁界ばく露の直後に増加し、1時間後にピークレベルに達し、ばく露の4時間後に基底レベルに戻った。
更に、磁界ばく露に誘発されたCREB-DNA結合の増加は、細胞外及び細胞内のCa2+濃度に依存したが、PKA、PKC、ERK、またはp38 MAPKには依存しなかった。
これらの結果は、磁界ばく露がCa2+が関連する信号伝達経路を通じてCREB-DNA結合を活性化させることを示すものである。
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