研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[PIMトランスジェニックマウス及びTSG-<i>p</i>53(p53ノックアウト)マウスにおける60 Hz磁界ばく露とリンパ腫のリスク] med./bio.

Exposure to 60 Hz magnetic fields and risk of lymphoma in PIM transgenic and TSG-p53 (p53 knockout) mice

掲載誌: Carcinogenesis 1998; 19 (9): 1649-1653

<目的>磁界白血病と関連すると述べている疫学論文と関連がないとする研究がある。この違いが何に基づくかは不明であるが“敏感な集団”においては新生物リスクが増大するかもしれない。この感受性は病気への遺伝的素因によるかもしれない。もしこの仮説が正しいとすれば“敏感な集団”の存在が疫学研究の矛盾を説明できるかもしれない。疫学研究は造血系への磁界影響を示唆しているが、これまでの動物実験では当該動物モデルへの関心は低かった。本実験においてはリンパ腫に遺伝的素因のある二系統のマウスを用いて60Hz磁界の影響を検討する。 <対象・方法>高発症動物モデルとしてPIMトランスジェニックマウス及び低発症動物モデルとしてTSG-p53(p53ノックアウト)マウスを用いた。PIMマウスはN-ethyl-N-nitrosourea(ENU)を25mg/kgを1回腹くう内投与、翌日から60Hz直線磁界を18.5h/d、23wばく露した。強さは0.002、2、10、10(1h on/1h off)G (Table 1)、p53はENUは投与せず、0、10.0G(Table 2)。 <結果・結論>Figs 1、2、Tables 1、2にまとめてあるように両系統のマウスともに磁界ばく露の影響はみられなかった。

研究目的(著者による)

このイン・ビボでの研究は、遺伝的に素因を与えたマウスの2つの系統におけるリンパ腫誘導に対する60Hz磁界の影響を調査するために実施した。

詳細情報

2つのトランスジェニックマウスのモデルシステムを用いた:1) pim-1 発がん遺伝子を有するマウス(いわゆるPIMトランスジェニックマウス、エチルニトロソウレアの単用量投与後にリンパ芽球性リンパ腫が急激に成長する);2) 腫瘍抑制遺伝子p53のないマウス(いわゆるTSG-p53マウス)。
各群につき雌雄各30匹の動物を用いて、異なる磁束密度磁界に連続または間欠的にばく露する実験を実施した。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 60 Hz
ばく露時間: 18.5 h/day for 23 weeks
ばく露2: 60 Hz
ばく露時間: 1 h on - 1 h off for 18.5 h/day for 23 weeks

ばく露1

主たる特性
周波数 60 Hz
タイプ
  • magnetic field
偏波
  • linear
ばく露時間 18.5 h/day for 23 weeks
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • 詳細不明
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 1 mT maximum 測定値 - -
磁束密度 0.2 mT - 測定値 - -
磁束密度 0.002 mT minimum 測定値 - -

ばく露2

主たる特性
周波数 60 Hz
タイプ
  • magnetic field
偏波
  • linear
ばく露時間 1 h on - 1 h off for 18.5 h/day for 23 weeks
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • 詳細不明
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 1 mT - 測定値 - -

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

10Gの磁界に連続ばく露された雄のPIMマウスにおけるリンパ腫発生率は、性別でマッチングした偽ばく露よりも有意に低下した。どちらの系統のマウスにも、偽ばく露群と他のばく露群でリンパ腫発生率に有意差は認められなかった。
これらの結果は、磁界ばく露が遺伝的素因のあるマウスのリンパ系腫瘍形成有意なリスク要因であるという仮説を支持していない。

研究の種別:

研究助成

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