研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[電磁界への感受性を含む視覚的集中力、認知、記憶に対する低周波(50 Hz、1 mT)電磁界の影響] med./bio.

Effects of an ELF (50 Hz, 1 mT) electromagnetic field (EMF) on concentration in visual attention, perception and memory including effects of EMF sensitivity

掲載誌: Toxicol Lett 1998; 96 - 97: 377-382

<目的>この研究は、50Hz、1mTの注意記憶健康状態、低周波電磁界に対する感受性などを検討した。 <対象・方法>ウイーン近郊の変電所で実験をおこなった。電磁界は1mT(±10%)であった。実験条件は(1)磁界ー雑音(45 dB)、(2)雑音45 dB、(3)コントロール(<3μT、<28 dB)でおこなった。各実験は1時間かかった。被験者は66名(男54、女12、18~36才;平均23才)。半数は学生、半数は陸軍兵士。表1に実験の組合せを表示。施行したテストは(1)注意集中と負荷(d2)、(2)速さと正確さ(WIT)、(3)言語記憶、(4)気分(不快)、(5)人格テスト、(6)電磁界に対する感受性質問。 <結果・結論>変化が認められなかったのはd2-エラーのみであった。d2-エラーは視覚処理の失敗率を示す。他の機能すなわち注意集中、認知記憶磁界ー雑音条件で減少した。電磁界に「敏感ではない」という被験者群では差はなく、「敏感である」という群では差がはっきりしている。機序については殆ど知られていない。

研究目的(著者による)

ヒト被験者の集中⼒、認知記憶に対する50 Hz磁界へのばく露の影響を調査すること。

詳細情報

「対照」、「雑⾳」、「磁界」の3条件を調べた。磁界の発⽣は雑⾳も伴うことから、「雑⾳」条件を疑似ばく露とした。合計で66⼈の被験者を調べた。36⼈を「対照」条件及び「磁界」(またはその逆)にばく露した。残りの30⼈を「対照」条件及び「雑⾳」条件(またはその逆)にばく露した。2つの条件の間に1時間の休憩を⼊れた。被験者は⾃⾝による評価に従い、電磁界に対して敏感なグループと敏感でないグループに分けた。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
ばく露時間: 1 hour

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
ばく露時間 1 hour
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
チャンバの詳細 wooden cabin in a transformer station
ばく露装置の詳細 subjects were seated in a wooden cabin, which was placed at a distance from a transformer coil, so that the magnetic field was approximately 1 mT in the head region; magnetic field exposure was accompanied with noise of about 45 dB; temperature was 21°C and humidity circa 48%
Sham exposure A sham exposure was conducted.
Additional information control condition: background magnetic field was less than 3 µT and noise less than 28 dBA; noise condition: background field was less than 3 µT and noise about 45 dB as in magnetic field condition
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 1 mT - - - at the head ± 10%

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
研究対象とした臓器系:
調査の時期:
  • ばく露中

研究の主なアウトカム(著者による)

「対照」と「雑音」条件の比較では有意差は認められなかった。「磁界」条件を「対照」と比較した場合、有意差が認められた。ばく露された被験者は、集中力、精度及び記憶課題遂行能力が低下した。「磁界」条件と「雑音」条件の比較でも有意差が認められた:記憶課題遂行能力及び精度が有意に低下し、より強い不快感が観察された。被験者の自己評価による感受性を統計的分析に含めると、電磁界に敏感であると評価した被験者では影響がより強まったが、敏感ではないと評価した被験者では影響は消失した。
このデータは、50 Hz磁界による集中力、認知及び記憶課題遂行能力の低下は、電磁界に対して敏感であるという自己認識に影響されるようであることを示している、と著者らは示唆している。

研究の種別:

関連論文