研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[細胞株へのELF-EMFSによる影響:実験室でのELF発生の管理] med./bio.

ELF-EMFs induced effects on cell lines: controlling ELF generation in laboratory

掲載誌: Progr Electromagn Res B (PIER B) 2010; 24: 131-153

この研究は、神経細胞株(PC12)、グリア細胞由来GL15細胞、また筋細胞のモデルとしてC2C12筋細胞を用いて、超低周波電磁界(ELF-EMFばく露の非興奮性および興奮性細胞への影響を調べた。実験において特に注意を払った点は、ELF-EMFの発生とばく露の標準的で再現性のある環境条件を提供するようなプロトコルを用いることであった。そのために、ある一定の体積の組織サンプルでの時間変化する磁界ベクトルの測定を可能とする測定用スキャナー付きのばく露システムを開発した。このシステムは、電磁ノイズ源の検出、監視、除去が可能であることに加え、電磁界の強度と偏波の均一性の評価も可能であった、と述べている。ばく露実験の結果、ELF-EMFの急性ばく露(0.1 – 1 mT、30分間)後の細胞の応答(活性酸素腫(ROS)産生、ミトコンドリア膜電位)は、磁界の強度またはばく露時間よりも、細胞のモデルに強く依存することが示された;PC12およびGL15細胞株のどちらにおいても、ROS産生の有意な増加が検出されたが、それぞれの細胞株で時間コースが異なっていた;GL15細胞では、ミトコンドリア膜電位の低下が生じた可能性があり、これはC2C12細胞でも観察された;最大1 mTまでの慢性ばく露(6日間)は、細胞増殖または細胞分化に変化を生じさせなかった、と報告している。

研究目的(著者による)

本研究の狙いは2つある:1) 超低周波電磁界にイン・ビトロばく露中の異なる細胞モデル(神経細胞神経膠細胞骨格筋細胞)の活性酸素種の生成及びミトコンドリア膜電位を調査すること、及び2) そのプロトコルを、特に、生物学的モデルの制御された50Hz電磁界ばく露を担保するために開発した機器について記述すること。

加えて、動物モデルに関する先行研究(Falone他、2008)及び原核細胞を用いた細胞モデル(Cellini他、2008)のデータも要約した。これらの研究の詳細は本稿には示していない。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 30 min (acute exposure) or 7 days (chronic exposure)

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
ばく露時間 continuous for 30 min (acute exposure) or 7 days (chronic exposure)
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 Helmholtz coils with a side length of 828 mm, a separation of 451 mm and 64 turns of AWG (American Wire Gauge) 12 wire
Sham exposure A sham exposure was conducted.
Additional information whether the chronic exposure was also done with Helmholtz coils or instead with a solenoid is not stated clearly in the article
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 0.1 mT minimum - - -
磁束密度 1 mT maximum - - -

Reference articles

  • Di Loreto S et al. (2009): [50Hzの超低周波磁界ばく露はラットの皮質ニューロンに酸化還元及び栄養応答を生じる]
  • Cellini L et al. (2008): [50Hz電磁界のばく露に対する細菌の応答]
  • Falone S et al. (2008): [50Hz磁界への慢性的なばく露は老齢ラットの脳における抗酸化防御系の有意な弱化を引き起こす]
  • Falone S et al. (2007): [50Hz超低周波電磁界は神経芽腫細胞における酸化還元及び分化状態を変化させる]
  • Simko M et al. (2004): [In vitroでの細胞応答エフェクターとしての低周波電磁界:免疫細胞活性の可能性]

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

調査の時期:
  • ばく露中
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

このデータは、超低周波電磁界への急性ばく露後の細胞の応答(ROS産出及び/またはミトコンドリア膜電位)は、適用した磁界強度またはばく露持続時間よりも、細胞のモデルに強く依存することを示した。神経細胞様(PC12)及び神経膠様(GL15)細胞株のどちらでも、ROS産出の有意な増加が検出されたが、それぞれの細胞株で時間コースが異なっていた。GL15細胞では、恐らくミトコンドリア膜電位の低下を生じ、これはC2C12細胞でも認められた。

細胞増殖または細胞分化には、0.1mTまでの超低周波電磁界への慢性ばく露後に変化はなかった。

研究の種別:

関連論文