研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[60 Hz磁界ばく露はラットの脳細胞にDNAのクロスリンクを誘発する] med./bio.

60 Hz magnetic field exposure induces DNA crosslinks in rat brain cells

掲載誌: Mutation Research - Fundamental and Molecular Mechanism of Mutagenesis 1998; 400 (1-2): 313-320

これまで、60Hz磁界(0.5mTで2時間)にばく露されたラット細胞内のDNA鎖切断の増加を見いだした。DNAの移動はほとんど、磁界誘導され、これはプロテナーゼKで処理した直後に見られ、磁界がDNAとタンパクのクロスリンクをもたらすと示唆される。加えて、対照ラットの脳細胞をX線にばく露させると、DNAの移動が見られ、その量はプロテナーゼK処理に無関係であった。しかし、X線によりDNAの移動が増加したが、プロテナーゼKで処理しても磁界ばく露された動物細胞では遅れた。これはDNA-DNAクロスリンクも磁界誘導されたことを示唆している。磁界の効果もDNAクロスリンクで誘導されるマイトマイシンCでの効果と比較されたが、2つの薬品での効果のパターは同じで、60Hz磁界に急速ばく露されたラットの脳細胞に、DNA-タンパク質、DNA-DNAクロスリンクが形成されることをデータは示唆している。

研究目的(著者による)

60Hz磁界ばく露ラットの脳細胞にDNA‐タンパク質及びDNA‐DNAクロスリンクを生じるかどうかを調べること。

詳細情報

DNA-タンパク質クロスリンクを調べるため、マイクロゲル電気泳動法における切片を、DNAからタンパク質を除去する電気泳動の前にプロテナーゼ-Kで処理した。
DNAは負に帯電し、電気泳動の際に陽極移動する。DNAとクロスリンクしたタンパク質の大半は正に帯電し、陰極移動する(ゆえに、タンパク質の除去はDNAを解放し、DNAの移動を増加させる)。

一部の切片は更にエックス線で照射した(DNA-DNAクロスリンクの同定のため)。

著者らはまた、磁界の影響を既知のクロスリン誘導因子(マイトマイシンC)と比較した(これらの実験はヒトリンパ球で実施した)。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 60 Hz
ばく露時間: 2 h

ばく露1

主たる特性
周波数 60 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
ばく露時間 2 h
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
チャンバの詳細 Plastic cage/ 45 cm x 21 cm wide x 22 cm high
ばく露装置の詳細 coils wound on frames fabricated from wood and aluminium; cage was placed in the center of the space between the coils
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 500 µT unspecified 測定値 - -
電力 8 W maximum - - at 1 mT exposure

Reference articles

  • Lai H et al. (1993): [ラット中枢神経コリン作動性神経系に及ぼす60 Hz磁界の効果]

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
研究対象とした臓器系:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

これらのデータは、60Hz磁界への急性ばく露後のラットの脳細胞に、DNA‐タンパク質及びDNA‐DNAクロスリンクが形成されることを示している。このことは、磁界誘導したDNA移動はプロテナーゼ-K消化の後でのみ明らかになった;磁界ばく露はエックス線で誘導した移動を阻害した;プロテナーゼ-K処理はエックス線で誘導した移動を更に増加させなかった、という知見によって示された。このことは、リンパ球DNAへのマイトマイシンCの影響との類似性によって更に支持された。

研究の種別:

研究助成

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