この研究は、ICRマウスの腎臓機能の指標(尿素窒素およびクレアチニン)に対する、35 kV/mの50 Hz電界への7、14、21、35、49日間のばく露後の影響を調べた。25および52日間のばく露後、腎臓の病理学的形態および細胞の超微細構造を、それぞれ光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した。その結果、対照群と比較して、ばく露群では21および35日目の尿素窒素濃度、ならびに14、21および35日目のクレアチニン濃度が有意に上昇したが、どちらも49日目には通常レベルに戻った。更に、25日間のばく露後には、ボーマン隙の拡大、腎尿細管上皮細胞の空胞化および有足細胞の足突起消失が認められたが、52日間のばく露後には異常は認められなかった。短期間(35日間)のばく露は腎障害を生じ得るが、これは長期間(52日間)のばく露後には回復する可能性がある。この研究ならびに関連する文献に基づく一つの説明として、35 kV/mの電力周波数電界ばく露の下ではミトコンドリア動態の不均衡によって腎臓の障害が生じること、電力周波数電界はWnt/β-カテニンシグナルを活性化して腎尿細管上皮細胞および糸球体有足細胞の回復を促進し、それによって腎臓の障害が回復する、と著者らは結論付けている。