研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[50Hz磁界への事前ばく露を受けたマウスL929細胞ではメナジオン誘導性DNA損傷応答が変化する] med./bio.

Pre-exposure to 50 Hz magnetic fields modifies menadione-induced DNA damage response in murine L929 cells

掲載誌: Int J Radiat Biol 2008; 84 (9): 742-751

この研究は、マウスL929細胞を用いた実験で、50 Hz磁界MFばく露、あるいは紫外線B(UVB波長280 - 320 nm)放射またはメナジオン(MQ)とMFの組み合わせばく露によるDNA損傷影響を調べた。MQばく露は、150 μMで1時間、UVBばく露は160 J / m2で20分間、MFばく露は、100または300 μTで24または48時間とし、細胞へのばく露は、MFUVB、MQのさまざまな順番と組み合わせで行われた。ばく露終了後にサンプルをヨウ化プロピジウム(PI)で染色し、フローサイトメータで細胞周期の段階を分析した。アポトーシス細胞はサブG(1)イベントと定義した。その結果、最初に100 μTの MFの24時間ばく露を受けた細胞では、その後に行われたMQばく露に対する細胞応答が有意に変化した(すなわち、サブG(1)細胞の割合が減少し、G(2)/ M期の細胞の割合が増加した);300 μT MFで同様のばく露スケジュールの場合、同様の変化に加え、G(1)期の細胞の割合も減少した;MQばく露の後​​にMFばく露を行なった場合、MQへの細胞応答に変化はなかった;MFばく露のみ、またはMFとUVBの組み合わせばく露による影響は見られなかった、と報告している。

研究目的(著者による)

DNA損傷因子に対するげっ歯類の神経芽腫細胞の応答に、超低周波磁界ばく露が影響力を及ぼすという仮説を証明すること。

詳細情報

げっ歯類のL929細胞を、紫外線B波(UVB、160J/m²、20分間)またはDNA損傷因子のメナジオン(150µM、1時間)あり/なしで、50Hz磁界MF、100及び300µT)に24または48時間ばく露した。以下の13群の異なる組合せを調べた:
1) UVB + MF (100 µT) を24時間、
2) UVB + MF (100 µT) を48時間、
3) MF (100 µT) を24時間 + UVB + MF (100 µT) を24時間、
4) MF (100 µT) を24時間 + UVB + インキュベーションを24時間、
5) MF (300 µT) を24時間 + UVB + MF (300 µT) を24時間、
6) メナジオン + MF (100 µT) を24時間、
7) メナジオン + MF (100 µT) を48時間、
8) MF (100 µT) を24時間 + メナジオン + MF (100 µT) を24時間、
9) MF (100 µT) を24時間 + メナジオン + インキュベーションを24時間、
10) メナジオン + MF (300 µT) を24時間、
11) メナジオン + MF (300 µT) を48時間、
12) MF (300 µT) を24時間 + メナジオン + MF (300 µT) を24時間、
13) MF (300 µT) を24時間 + メナジオン + インキュベーションを24時間。

各群には、ばく露なしでインキュベーション時間が同一の対照群磁界ばく露のみのサンプル、UVBまたはメナジオンばく露のみのサンプルを含む。各群につき4-6回の反復実験を実施し、各レプリカには1つの処理ごとに2-4サンプルを含めた。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
ばく露時間: for 24 or 48 h

General information

Cells were treated in 13 groups: 1) Ultaviolet B radiation + magnetic field (100 µT) for 24 h, 2) Ultraviolet B radiation + magnetic field (100 µT) for 48 h, 3) Magnetic field (100 µT) for 24 h + ultraviolet B radiation + magnetic field (100 µT) for 24 h, 4) Magnetic field (100 µT) for 24 h + ultraviolet B radiation + incubation for 24 h, 5) Magnetic field (300 µT) for 24 h + ultraviolet B radiation + magnetic field (300 µT) for 24 h, 6) Menadione + magnetic field (100 µT) for 24 h, 7) Menadione + magnetic field (100 µT) for 48 h, 8) Magnetic field (100 µT) for 24 h + menadione + magnetic field (100 µT) for 24 h, 9) Magnetic field (100 µT) for 24 h + menadione + incubation for 24 h, 10) Menadione + Magnetic field (300 µT) for 24 h, 11) Menadione + Magnetic field (300 µT) for 48 h, 12) Magnetic field (300 µT) for 24 h + menadione + magnetic field (300 µT) for 24 h, 13) Magnetic field (300 µT) for 24 h + menadione + incubation for 24 h.

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
ばく露時間 for 24 or 48 h
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 pair of 340 mm x 460 mm Helmholtz coils, separated by 220 mm, placed inside an incubator
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 100 µT - 測定値 - -
磁束密度 300 µT - 測定値 - -

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

UVBばく露+事前または事後の磁界ばく露(グループ1-5)は、UVB単独ばく露群と比較して、細胞周期の段階の構成に有意な変化を生じなかった。磁界(100µT)に最初にばく露し、次いでメナジオンにばく露し、最後に再び磁界(100µT)にばく露した細胞(グループ8)またはインキュベートした細胞(グループ9)だけが、メナジオン単独ばく露群と比較して、sub-G1期の細胞の割合が有意に低く、G2期及び有糸分裂期の細胞の割合が有意に高かった。より強い磁界(300µT)を用いた実験では、グループ12の結果はグループ8と同等であったが、加えてG1期の細胞の割合が有意に低かった。300µT磁界への24時間ばく露は、細胞内グルタチオンのレベルに影響しなかった。

著者らは、磁界への事前ばく露は、他の因子に対する細胞の応答を変化させ得ると結論付けている。この結果は、100µT程度の磁界には、メナジオンに対するL929細胞の応答への有意な影響があることを示している。

研究の種別:

研究助成

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