研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[ヒトリンパ球においてベンゾ(a)ピレンで誘導した小核及び姉妹染色分体交換の頻度に対する超低周波電磁界の影響] med./bio.

The effect of extremely low frequency electromagnetic fields (ELF-EMF) on the frequency of micronuclei and sister chromatid exchange in human lymphocytes induced by benzo(a)pyrene

掲載誌: Toxicol Lett 2003; 143 (1): 37-44

この研究は、ベンゾ(a)ピレン(BP)によって誘発されるヒトリンパ球での小核MN)および姉妹染色分体交換SCE)の発生頻度に、超低周波磁界(ELF-MF)が相互作用するか否かを調べた。磁束密度0.8 mTの60 Hz ELF-MFを、単独で、またはBPとの組み合わせで、24時間ばく露した。その結果、腫瘍イニシエーターBP誘発性のMNおよびSCEの頻度は、用量依存的に増加した;24時間のBPと0.8 mT ELF-MFの組み合わせばく露とそれに続く48時間のBPばく露は、72時間のBP単独ばく露に比べ、MNおよびSCEの頻度を有意に増加させた(P <0.05);しかし、ELF-MFばく露群とELF-MF擬似ばく露対照群との間に有意差は観察されなかった;これらの知見から、低レベルのELF-MFは、ヒトリンパ球への変異原性効果のイニシエーターとしてではなく、BPのイニシェーションプロセスのエンハンサーとして作用することが示された、と報告している。

研究目的(著者による)

ヒトリンパ球においてイン・ビトロでベンゾピレンによって誘導した小核及び姉妹染色分体交換の頻度に対する超低周波電磁界の相互作用を調べること。

詳細情報

発がん性物質のベンゾピレンを、電磁界ばく露と同時に24時間、電磁界ばく露の後に48時間適用した。
処理後、以下を電磁界ばく露、偽ばく露の各群に実施した。1.対照群(無ベンツピレン処理) 、 2対照群+ジメチルスルホキシド(DMSO)、3-6:異なる濃度のベンゾピレン(1、5、10、15µg/ml)。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 60 Hz
ばく露時間: continuous for 24 h

ばく露1

主たる特性
周波数 60 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
ばく露時間 continuous for 24 h
Additional information Walleczek J, Shiu E.C, Hahn G.M, 1999 Increase in radiation induced HPRT gene mutation frequency after non thermal exposure to non ionizing 60 Hz electromagnetic fields. Radiat. Res. 151, 489-497.
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • two solenoids coils, 0.3 m in length and 0.15 m in diameter with 350 turns/m
ばく露装置の詳細 Culture plates placed in the center of the exposure system where the magnetic field was 2.5% homogeneous. The sham exposed cultures were tested with the same exposure system with the power supply switched off.
Sham exposure A sham exposure was conducted.
Additional information The magnetic field was oriented horizontally with respect to the culture plates.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 0.8 mT unspecified 測定値 unspecified -

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

ベンゾピレン誘導した小核及び姉妹染色分体交換の頻度は、量依存的に上昇した。
ベンゾピレンの72時間処理のみと比較して、ベンゾピレン超低周波電磁界への細胞の共ばく露は、小核及び姉妹染色分体交換の頻度の有意な上昇を生じた。
電磁界ばく露と偽ばく露対照の細胞には有意差は認められなかった(グループ1)。
この結果は、低磁束密度超低周波電磁界は、ヒトリンパ球において突然変異作用のイニシエータではなく、ベンゾピレンのイニシエーションのプロセスのエンハンサとして作用し得ることを示唆している。

研究の種別:

研究助成

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